パチンコ屋を叩くより電卓を叩け!—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[30]-(松沢呉一)
「家庭内殺人と他の感染症による死亡者の増加、飢餓、暴動…etc.—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[29]」の続きです。
パチンコ屋で感染するか?
私はもう何十年もパチンコをしていないのですけど、先々週くらいの時点でなお営業している一部店舗があって、中を覗きました。あの状態では感染しようがないですよ。ふだんと違って客が少なくて、客と客の間がどこもあいていました。店によっては間隔をあけて使える台を制限しているらしいのですが、人が少ないので、そこまでする必要がない。
店舗によっては混んでいるかもしれないけれど、そもそも対面で話をすること自体がまずない。開店待ちの時間に常連同士が話すくらいでしょうけど、外ですから、ほとんど感染の可能性はない。
全国にあれだけの数があって、現実にパチンコ屋で感染した事実なんてある? 私が見逃しているだけかもしれないけど、感染を拡大しているのはなんと言っても介護施設です。こちらは死にやすい層に感染させますから、そっちの対策を強化すればいいのに、なんでパチンコ屋をやり玉にあげているのかさっぱりわからん。
休業したため、すでに倒産したパチンコ屋があって、これ以上経済の停滞を招き、失業者を出すことはすべきではない。そんなに自殺者を出したいのか。人が失業して死ぬのがパチンコに代わる娯楽だってか。
わかりやすいところを叩いても感染防止の意味はない。そんなことより電卓叩け! 数字を見ないからおかしなことを言い出すのです。
※墨田区のパチンコ屋
ニューヨーク市民の21パーセントが感染
数日前にクオモ・ニューヨーク州知事が無作為にニューヨーク州の住民を調べた結果を公表しましたが、あの数字に複数の視点から注目しました。「怖い」って話じゃ全然ありません。むしろ逆です。
2020年4月24日付「AFP BB NEWS」
クオモ氏によると、抗体検査は今週、州内各地のスーパーの顧客3000人を無作為に選び、行われた。その結果、約14%が陽性反応を示し、ニューヨーク市内ではその割合が21%に上ったという。
この結果に基づくと、州全体で約260万人、ニューヨーク市内で約170万人が新型コロナウイルスにすでに感染した計算になる。
この試算は、州の公式発表の感染者数26万3460人を大幅に上回る。米国の感染の中心地である同州では、新型ウイルスで1万5500人以上が死亡している。
今回の抗体検査の精度は不確かで、検査人数も少ない。しかし、クオモ氏は、このデータを州全体に当てはめると、同州での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の致死率はわずか0.5%になると指摘した。
希望者の検査を拡大するより、無作為のサンプリングで調査した方が正確に全体像をとらえらると前にも書きました。それをしなくてもだいたいのことはわかるわけですが、自分で電卓を叩いて計算したことのない連中はそれさえわからず、「数字を低く見せている。検査しろ」と騒いでいたわけです。
ニューヨークでこれを実施した結果、州で14パーセント、市で21パーセントが感染。スウェーデンの3パーセントなんて全然たいしたことはない。今はもっと増えているにせよ、スウェーデンはうまくやってます。
実際の致死率は1パーセント以下で確定
どうやらこの調査は予備調査のようなものらしくて、元データは公開されていないので、ここに出ている数字で計算をすると、致死率は0.6パーセント弱です。小数点以下を切り捨てるとたしかに0.5パーセント。老人や基礎疾患のある人たちが数字を上げていますが、その層を含めてもこの数字なのです。
当初は致死率2パーセント台とされてましたが、机上の計算では、今は1パーセントを大きく切って0.66パーセントです。健康な若い世代では0.01パーセントを切ります。今回のサンプリング調査もこれに近い。ただ、もう少し考慮しなければならない要素があります。
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