松沢呉一のビバノン・ライフ

「それほどのもんか?」と疑問を投げかけるスタンフォード大学の研究者たち—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[32]-(松沢呉一)

インフルエンザをめぐる議論を終わらせたい—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[31]」の続きです。

 

 

 

米国とドイツのアンチ・ロックダウン

 

vivanon_sentence米国のアンチ・ロックダウン・プロテスターズはもっぱら右派。

対してドイツではもっぱら左派。以下は昨日のメーデーの行動です。

 

 

 

メーデーってことで、いくつもの左派グループが入り乱れていて、ロックダウン反対が直接的なテーマとは限らないのですが、ロックダウンのために禁止されたデモを強行し、逮捕者も多数出ています。

ドイツにもロックダウン反対派の右派はいて、示威行為が禁止されるという意味で、反体制的な思想を持つ人たちにとってロックダウンは等しく思想弾圧としてとらえられます。

そのことが顕著に出たのがレバノンです。

 

 

 

レバノンは昨年から反政府運動が盛り上がっていたのですが、政府側が感染者数が少ないにもかかわらず(今なお3桁)、ロックダウンを実施して、反政府運動を潰します。

この結果、失業者が増大。反政府運動側にはもともと対立があったのですが、反ロックダウンで共闘が成立し、ここに来てさらに規模が大きくなって反ロックダウン、反政府運動が激化し、火炎瓶が飛び、銀行が焼き討ちされ、死者も出ています。ウイルスのことはもうどうでもよくなってましょう。メシが食えないとこうなります。

政府が反対勢力潰しにロックダウンを利用していると思われるケースはアフリカ諸国でもしばしば見られ、素早く厳しいロックダウンを実施した国がアフリカに多いのは、こういった意図が背景にありそうです。

たとえばウガンダでは今までもロックダウンされていたような国民の管理が行なわれていたのですが、さらにウイルス対策のロックダウンをして中国共産党的個人管理を進めています。今なら国際的批判も浴びず、WHOの指導に従ってウイルスと闘ういい国なのです。こちらの記事参照。

ウガンダでは感染者は今も2桁であり、死者は報告されていません。ロックダウンの必然性などありませんでしたが、数字が少ないのはロックダウンが成功したからだと言い張れます。

 

 

反ロックダウンをめぐる主導権争い

 

vivanon_sentenceロックダウンは権力側にとっては甘い蜜(と考える政府であれば)。しかし、長期化すると国民の不満は確実に高まります(柔順な国民でなければ)。元に戻すと政府が危なくなるため、さらに長期化するというのが最悪のパターンです。

この時の不満は雇用する側の経営者、雇用される側の労働者のどちらにおいても高まりますし、右派左派を問わず高まります。

この不満をどこが吸い上げるのかって話で、米国では現在保守派が強く、ドイツでは左派が強い。

米国の共和党支持層でも、圧倒的多数がロックダウンに賛成している中、たぶん先々を計算しているのがいるんだべなと思います。

そのため、米国のアンチ・ロックダウン運動に対してはリベラル派から警戒の声も出ています。現在はまだ人数が少ないけれど、あれは大きくなりかねないと。言っていることが正しければそうなるでしょうし、ロックダウンの不満が高まると、全部もっていかれます。

それを危惧するなら、リベラルからのロックダウン反対運動を起こせばいい。そうしないと、正しさを右派に譲ることになります。

少なくとも言論レベルでの反対はしていった方がいいのですが、こういう時に「右派がやっているからロックダウン反対に反対」になってしまう人たちが多いので、いよいよ敵を強大にしてしまう。こういう発想が自分らを弱くしていることに無自覚です。

ネトウヨは「韓国がやっているから賛成しない」、ネトサヨは「ネトウヨが賛成するから反対」みたいな。どっちも外側に判断基準があって、自身の考えがない点では同じです。どっちもいらん。私はどっちとも関係なく考えてきてますし、これからもそうします。

※2020年4月21日付「The NewYorkTimes」。この記事を読むと、どういう団体が動いているのかだいたいわかります。

 

 

スタンフォード大学のジェイ・バッタチャリヤ教授に注目

 

vivanon_sentence私がナンボ言っても説得力ってもんがないですが、研究者でもロックダウンに慎重な意見を表明している人たちがいます。スウェーデンのアンデシュ・テグネルだけではありません。

 

 

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