松沢呉一のビバノン・ライフ

ロックダウンにナチズムを見るのは妥当か—ナチスの時代とコロナの時代[2]-(松沢呉一)

コルディッツ・コックが飛んだ日—ナチスの時代とコロナの時代[1]」の続きです。

 

 

キェルツェ・ポグロムとアンシュルス

 

vivanon_sentence音楽の流れでもうひとつ。前々から気になっていたのですが、とっくに解散しているthe cabsの「キェルツェの螺旋」はキェルツェ・ポグロムのことですかね。歌詞からそうとはっきりとはわからないけれど。

 

 

 

 

the cabsには「anschluss」という曲もあって、さてはナチスに詳しいな。アンシュルスについてはこちら。キェルツェ・ポグロムもアンシュルスも頭を悩ませます。

the cabsのドラム担当だった中村一太という人物が気になるのですが、現在はドイツ在住です。

つうことで、ここからナチスを生み出した時代と現在の類似点、あるいは相違点を見て行きます。無理矢理な展開。

 

 

ロシアでも高まるアンチ・ロックダウン

 

vivanon_sentence世界各国でアンチ・ロックダウン・プロテストが起きていて、逮捕者も続出しています。

アンチ・ロックダウン・プロテストは、米国やドイツだけでなく、英国、フランス、オランダ、オーストリア、ブラジルなどでも行なわれ、レバノンでも激しい抵抗運動が行なわれているのはすでに見た通り。

その主張や政治的背景はさまざまで、陰謀論も混じっている一方、ほとんど私に近いことを言っている人たちも多数います。「死亡するのはおもに老人と病人であり、それを含めても0.6パーセントしか死なないのに、どうして全体をロックダウンする必要があるのか」と、はっきり数字を出している人もいました。

一言でまとめることはできないですが、参加者の言葉を見て行くと、「仕事をさせろ」「メシを食わせろ」がもっともポピュラーで、すでに失業した人たちも参加しています。

米国のアンチ・ロックダウン・プロテストが報道されやすいので「極右がやっている」と見なされてしまいそうですが、米国でもいたって素朴にロックダウンに対する疑問を持つ層が参加しているように見受けられ、逆にヨーロッパでも反体制左翼運動家たちばかりってことではない。

数回前にも書いたように、「この人たちは××だから」とレッテルを貼って、その意見を検討しないまま否定する人たちが多いわけですけど、多様なものを単一の存在として見る思考はナチスの発想に通じます。

その発言内容を見た時に、「ウイルスは生物兵器である」といった陰謀論を除いて、私はだいたい共感できます(武漢のウイルス研究所から漏れたとの説はなお完全には否定できないと思っていますが、具体的な根拠が出てこない以上、ことさら取り上げるべきでもない)。「日本は数字を低く見せようとしている」という陰謀論よりも共感できます。

あまりそういった運動が表面化しないロシアでも広範な抵抗運動が起きています。当初はネット上の仮想空間での行動だったようです。マップ上でデモをする。これに対して当局はネット規制を始め、呼びかけ人の一人である北オセチアの歌手ヴァディム・チェルディエフ(Вадим Чельдиев)は3月11日に逮捕されて罰金刑となり、現在も予防拘禁されているようです。

どうやらこの人の主張にも陰謀論ぽいものが入っている臭くて、そのため、虚偽の情報流布が容疑であり、その主張や逮捕の是非についてはペンディングとしますけど、逮捕に対する抗議が起き、それとはまた別にリアルな路上での抗議もロシア各地でなされるようになっています。

Facebookよりヴァディム・チェルディエフ

 

 

イスラエルのプロテストに感応

 

vivanon_sentence

かくもさまざまなケースがありつつ、世界的に、今まで政府に疑問を抱いていなかった層までが抵抗し始めていることは間違いない。仕事を失い、メシも食えないのは思想信条を問わずです。

そんなことを言いはしないでしょうが、これらのプロテストの背景には「感応させろ」という思いもあるのではなかろうか。「COVID-18をめぐる世界の対応は過剰ではないか」という疑問を人と確認したい。

私が手法としてもっとも「感応」したのはイスラエルの行動です。

 

 

 

 

間隔を空けています。

 

 

next_vivanon

(残り 1474文字/全文: 3326文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ