松沢呉一のビバノン・ライフ

ハンガリーに見る全体主義・民族主義の高まりとウイルス利用—ナチスの時代とコロナの時代[5]-(松沢呉一)

ウイルスを恐れるのは精神異常とベラルーシのルカシェンコ大統領—ナチスの時代とコロナの時代[4]」の続きです。

 

 

ハンガリーでもウイルスを利用した権力集中が進んでいる

 

vivanon_sentenceここに出したSSは、5月6日、ハンガリーのオルバーン・ビクトル(Orbán Viktor)首相がFacebookに投稿した地球儀です。第一次世界大戦以前のハンガリーの領土を示して、周辺諸国を徴発したとされます。

ルーマニアのメディアがこれに気づいて、批判が拡散していったのですが、ハンガリー本国では、歴史的な地図を示して、学生たちにエールを送ったに過ぎないという擁護もなされています(大学を卒業した者たちに「歴史を作るのだ」と励ます言葉が添えられている)。

日本で言えば安倍晋三が戦前の地図を示して、大学卒業生に「歴史を作るのだ」と書いたら、やっぱり周辺諸国は反発しましょうよ。

他意がなかったとしても安倍晋三であれば批判されるのと同じく、オルバーン・ビクトルも批判されます。

オルバーン・ビクトルはハンガリー民族主義を強め、移民排斥を進めている人物です。ハンガリーは第一次世界大戦後の1920年、国土の72パーセントを失っています。今も各国にハンガリー人たちが散っており、オルバーン・ビクトルは憲法を改正して、ハンガリーはそれらのハンガリー人にも責任を持つことが明記されました。

ハンガリーでは、公共事業がオルバーン・ビクトル傘下の企業に発注され、それらから流れ込む資金がオルバーン・ビクトル率いるフィデス=ハンガリー市民同盟(Fidesz-Magyar Polgári Szövetség)の裏金になっていると言われるのですが、検察総長を政権が指名することになっているために捜査は進んでいません。どっかで聞いたような話です。

オルバーン・ビクトル政権はそれ以前から民族主義的傾向が強かったわけですが、ウイルスを利用する形で権力を集中できる法改正をしています。これから何をやらかすのか。

英語版Wikipediaより1920年以前と以降のハンガリーを示す地図。ピンクの部分が以降のハンガリー。円グラフの赤がハンガリー人。失った国土は現在のルーマニア、ポーランド、チェコ、ユーゴスラビア、オーストリアの領土になっている。

 

 

民主主義の後退を数値化したフリーダムハウスの報告書

 

vivanon_sentenceこの投稿と同じ日、ナチスに対抗して1941年に結成された米国のNGO「フリーダムハウス」年次報告書を公表、その中でハンガリーやセルビア、モンテネグロを名指して「民主主義が前例のない規模で後退しており、もはや民主主義国とはいえない」としています。

 

 

 

 

長いので全部は読んでないですけど、この内容については日本でも報じられていますので、参照のこと。

この報告書は東ヨーロッパと中央アジアの29カ国が対象です。多くの国で民主主義が後退し、中国やロシアとの関係を強めていることが指摘されています。ここでも中国か。

 

 

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