松沢呉一のビバノン・ライフ

100年前のマスク強制—マスク・ファシズム[付録 3]-(松沢呉一)

休戦記念日に見るヨーロッパと北米のマスク率の違い—マスク・ファシズム[付録 2]」の続きです。

 

 

マスク強要とその抵抗運動

 

vivanon_sentence以下のふたつの記事はメチャ面白かったです。

 

2020年4月29日付「The Guardian

 

 

2020年5月2日付「THE CONVERSATION

 

 

今世界で起きていることはスペイン風邪の時にすでに体験したことだったことを鮮やかに見せてくれています。

スペイン風邪当時のマスクの義務化と抵抗については他にも多数の記事が出ていて、私なりにまとめておきます。

 

 

戦争がスペイン風邪対策に影響したのか?

 

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スペイン風邪の際には、ヨーロッパよりも米国やカナダ、オーストラリアが激しい規制を敷いています。学校、教会、劇場、映画館、デパート、理髪店などを閉鎖して、現在のロックダウンのような状態になりました。

これはペストを体験していないためとの説もありますが、もしそうだとすると、経験は人ではなく、土地に記憶されるってことです。ヨーロッパから渡ってきた人たちもペスト禍は経ているわけですから、人に蓄積されるのではない。

その可能性もゼロではないにせよ、もっと合理的な理由づけが可能で、ヨーロッパでは今まで経験したことがなかった過酷で大規模な戦争が進行してました。

兵隊は対策をとったとしても限界があります。人と密着するなと言っても塹壕の中や潜水艦の中では無理。寝る時も一般の兵士では個室なんてあり得ない。防毒マスクはウイルスを遮断できるでしょうが、つねにしているわけにもいかない。

非戦闘員だって防空壕の中で距離は保てず、空気の入れ替えは不可能です。戦争が終るまでは工場だって休めず、ベルツ花子が書いていたように、食糧が不足している地域も多くて、インフルエンザに気を配っていられない。

対して米国、カナダ、オーストラリアは自国内で戦闘していたわけではなく、空襲があったわけでもないですから、インフルエンザ対策をする余裕があったってことではなかろうか。

日本も同じです。青島でドイツと軽く戦闘しただけ。それよりシベリア出兵の方が大きかったでしょうが、これも遠いシベリアの話ですから、学校や軍隊程度ではあれマスクを義務づけられてました。

オーストラリアではマスクの規制はなかったようですが、カナダと米国ではいくつかの州、いくつかの都市でマスクの着用義務が課せられています。

違反すると罰金刑となり、違反したために銃で撃たれたケースも複数発生(亡くなってはいない)。現在アフリカやアジアの一部で起きているようなことが起きています。

Influenza patients at a military hospital in Switzerland, December 1918. 病室でもマスクをしないスイスの人たち。看護師たちもしていません。

 

 

死亡率、致死率が高く、若者が死にやすかった

 

vivanon_sentence今のロックダウンに近い措置は過剰だったとは言えないかと思います。前にも書いたように、スペイン風邪は致死率が非常に高い。何ぶんにも戦争がかぶっているため、正確なデータが存在せず、感染者数も死亡者数も幅があるのですが、最低でも1パーセント、最大で20パーセントの致死率です。

 

 

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