松沢呉一のビバノン・ライフ

水月ホテル鴎外荘の閉館とマスクの値崩れ—マスク・ファシズム[10]-(松沢呉一)

スペインのマスク義務化は「意味のない義務化」の問題点を浮き上がらせる—マスク・ファシズム[9]」の続きです。

 

 

 

東京の天然温泉がひとつ消えた

 

vivanon_sentence池之端の水月ホテル鴎外荘がコロナ閉館だというので、温泉に入りに行ってました。前から気にはなっていたのですが、風呂に入るだけで1,650円もします。だったら近所の銭湯・六龍鉱泉に行った方がいい。そっちも天然温泉です。ということでここまで入らずに来てしまいましたが、最後となると入っておきたい。

最終日は混み合うかと思って、前日行こうと思ったのですが、行き当たりばったりの私としては珍しく電話で問い合わせをしたら、最後ということで宿泊客が多くて、風呂も混み合い、「入場制限をするかもしれません。明日のチェックアウト後の方が空いていると思います」ということでした。

それでも並ぶことになるかもしれないので、マスクは必須だなと思いました。何度も言ってますが、私はマスクを一切しないと決めているのではなくて、必要がないところではしないだけであり、COVID-19においては必要だと思ったことがこれまでありませんでした。

並んでいるだけならいいとして、積もる話もあるわけですよ。私はないけど、時間潰しで、並んでいる人となんか話したりすることもありましょう。

そこで前夜、リュックから、いざという時のために持ち歩いているマスクと手袋とアルコールが入った袋を取り出して中をチェックし、状況を見てマスクのタイプを選べるように、マスクを2種用意しました。完璧です。

で、昨日の昼頃に、根津の駅で降りて水月ホテル鴎外荘に向いがてら、マスクを用意しようと思ってリュックの中を探したのですが、ありません。用意した袋をリュックに戻すのを忘れてました。よくあることです。

しかし、全然風呂は混んでなくて、並ぶ必要がなかったので、マスクも必要ありませんでした。

私が入った時にはちょうど出たところの2人組がいて、浴室には私1人だったのですが、すぐにもう1人入ってきまして、話しかけたら、彼は温泉マニアでした。前に来ているのですが、最後というので来たそうです。

「最後となるとどうしてもね」

「来てしまいますよね」

なんて話をして楽しかったです。ちなみに浴槽のドアは開けっ放しでした。

「都内第一号に認定された歴史のある天然温泉」とサイトにあるのですが、これは東京で初めて湧いた温泉という意味ではなく、昭和23年に温泉法に基づいた温泉の認定が始まった際、東京で最初に認定された温泉という意味かと思います。国会図書館で調べると、明治初期から根津には温泉があるのですが、他にも多数あります。この写真を見ていただければおわかりのように、そんなに広くなくて、付加価値を除けば六龍鉱泉の方がいいです。

 

 

動物園も美術館もまだ休み

 

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水月ホテル鴎外荘は負債が膨らむ前に自主休業ということらしい。そりゃ、旅館やホテルはどこも厳しい。宴会場は閉鎖するとして、あとはこまめに消毒をすれば感染リスクは低いとは言え、自粛の空気の中で長閑に旅行するのは安倍昭恵くらいですから、営業しても客が来ない。

これから先、いろんなものが消えていくことになりましょう。どうしようもなかったのかもしれないけれど、なんとかならなかったのかなあと思わないではいられない。

風呂に入ってすっきりというわけにもいかず、半分暗い気分で上野公園に行きました。もともと動物園は好きなんですけど、ちょうどナチスがらみでポーランドの動物園の本を読み出したところだったので、動物園に行きたくてさ。

あ。

 

 

 

まだ休園中でした。

動物園は、私のような寡黙な大人が一人で行くより家族連れや幼稚園・学校単位で行くところですから、ワーワーキャーキャーうるさい場所で、なおかつ動物と触れ合うコーナーが人気です。私にも人気。屋内施設もあって、子どもらや私はガラスにベタベタ触れるので、ウイルス対策が難しい場所です。やたらとドアを開け放つと動物が逃げますから、しょうがないか。

 

 

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