松沢呉一のビバノン・ライフ

出せなかった花嫁の写真—コロナの時代に流行るもの・廃るもの[20]-(松沢呉一)

今年も一部地域で全裸自転車を挙行!!—コロナの時代に流行るもの・廃るもの[19]」の続きです。

 

 

 

ブライダル産業その後

 

vivanon_sentenceゴーストタウン直前の歌舞伎町—コロナの時代に流行るもの・廃るもの[10]」に書いたように、ブライダル産業は自粛の影響をモロに受けています。それでもあの頃(4月初頭)までは予定が入っていて、そう簡単には予定をずらせない人たちが、そのまま式や披露宴をやっていたのですが、先々の予定が入らず、「これからが大変」との話でした。

その話通り、あれ以降、浜松市に本社がある大手結婚式場運営会社ラビアンローゼが民事再生の申し立てをしたり、広島市の結婚式場運営会社ドリームワークスが破産申請するなど、続々経営破綻しています。

そりゃそうです。こんな時に幸せそうに式や披露宴をやったらコロナ警察コロナ・ゲシュタポの神経を逆撫でして、なにをされるかわかったもんじゃない。親族や恩師、友だち、同僚だって参加を控える人がいましょう。SNSでおめでとうとも言えない。

どんな時だって結婚式をしたい人はやればいいと思うのだけれども、どうやるかを考えると簡単ではない。

対策はとれると思うのですが、参列者が隣と2メートルあけ、新郎新婦も2メートルあけ、しかも全員マスクしていたんじゃ式の雰囲気が台無しです。こういう時はフェイスシールドがいいと思います。

当面、結婚式場は苦しい時期が続きます。コロナ期に別れたカップルがたくさんいます。私の周りでもいます。結婚する予定だったのに別れたのもいるでしょう。その穴埋めをする出会いがこの間ほとんどありませんでしたから、しばらくは結婚まで至れない。

今年中には結婚しようと思っていた人たちもいるでしょうが、どこの式場も影響を受けていますから、この先、経営破綻する可能性があって、金を払って式ができなくなり、金も戻って来ないなんてことになると最悪ですから、予定を立てられないカップルも多く、いよいよ式場は困窮します。

ラビアンローゼが運営していた浜松の結婚式場。申し立ての結果報告が出ていないですが、営業は続けているようなので、再生手続きに入ったのでしょう。料金を割引しているので今がチャンスかもよ。チャチャチャと簡単にやっちまうのも安上がりでよろしいんじゃないでしょうか。

 

 

出せなかった花嫁の写真

 

vivanon_sentenceゴーストタウン直前の歌舞伎町—コロナの時代に流行るもの・廃るもの[10]」に書いたように、ブライダル産業は巨大で、結婚式場が潰れると、式場で働いていた人たちだけじゃなく、その周辺で食っていた人たちも干上がります。破綻した式場では、未払も発生しているでしょう。

私はブライダル産業がどうなろうと知ったことではないのですが、社会全体の景気後退は避けるべきだとずっと言ってきて、ブライダル産業も経済の一翼を担っている以上、他の産業にも影響しますから、無関心ではいられない。

あれを書いたちょっと前に、神社で結婚式を挙げて、外で記念写真を撮っているところに通りかかりました。私も写真を撮ったのですが、この写真は出せませんでした。コロナ警察コロナ・ゲシュタポがどこの誰が結婚したか探し出して、嫌がらせをするかもしれないですから。

でも、そろそろいいか。拡大してもさすがに個人特定はできないでしょう。

この時も親族らしき人たちがわずかにいただけで、地味に式を挙げたのだと思います。キャンセルできない事情もあるでしょう。そんな事情がなくても式はやっていいのだし。この時ばかりは私もどこの誰か知らない新郎新婦に「お幸せに」と心底思いました。

 

 

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