松沢呉一のビバノン・ライフ

ナッジ効果もフェイスシールドの方が上—マスクよりもフェイスシールド[6]-(松沢呉一)

なぜここまでフェイスシールドは一般に広がらなかったのか—マスクよりもフェイスシールド[5]」の続きです。

※この話は5月に書いてあったのですが、出し忘れてました。フェイスシールドや小池百合子の話を加えて、このシリーズで出しておきます。

 

 

ソーシャル・ナッジとは?

 

vivanon_sentence医療関係者、介護関係者が医療用マスクをするのは別として、「一般の人が市販のマスクをすることに意味があるのか否か」については、結局のところ、効果は限定的であり、混み合っている電車のように、密閉された空間で極近いところに人がいるケース、極近いわけではないにしても、長時間密閉された空間に他人といるケースを除いては、マスクをする意味はないということになりそうです。

使用する場所を限定しないで、そんなもんを外出時の一切に義務化し、それに反する者を逮捕した国は狂ってます。

「近所のコンビニやスーパーに買物に行く」「昼間の空いている時間帯に電車に乗って遠くの銭湯に行く」なんて時にマスクをする必要がなく、そういう場合、私はマスクをしてません。適切な判断です。

そういった直接的な感染予防の視点ではなく、意識に影響する効果を主張している人たちがいます。ナッジという考え方です。

私はナッジという言葉や考え方を今まで知らなかったのですが、以下の記事に出てきて、「どういう意味だろう」と思って検索してわかりました。

 

 

2020年5月12日付「BBC NEWS

 

 

この記事は、「なぜマスクを法で義務づけるような国がある一方で、ほとんどの人はしない国があるのか」というテーマを論じたもので、疫学的な議論の決着はついておらず、ここに来て、無症候感染者が相当数いることがわかってきたことや、無症候感染者や発症前の潜伏期でも感染する可能性を明らかにする研究結果が出てきていることが着用に拍車をかけていながら、結局は文化的背景の違い、選択の自由の考え方の違いに左右されているという内容です。

この中で香港科学技術大学ドナルド・ロウ(Donald Low)教授がソーシャル・ナッジという言葉でマスクの効果を説明しています。

 

 

ソーシャル・ナッジとしてのマスク効果

 

vivanon_sentenceナッジ(nudge)は「小突く」「軽く叩く」という意味の英語で、「注意を喚起するために肘でつつく」といった意味合いで使われます。会議でまずいことを言った人に隣の人が足を蹴って「その話をここでしちゃダメ」と教えたり、大きい声では言いにくいけれど、「ほらほら、あの人を見て」と教えるために肘で小突いたりするようなことです。

ここから「意思決定のためのきっかけ作りをする」といった社会デザインの手法を指すようになっています。強制的、義務的、明示的にやらせるのではなく、本人が自分自身でやってみようと決定する契機を準備するってことです。

ソーシャル・ナッジという用語は知らなかったですが、この考え方自体は目新しいものではありません。

たとえば議員の男女数に偏在がある時に、数字の帳尻を合わせるクオータ制は法による強制、矯正であり、全体主義的、差異主義的手法です。

私はこれに反対。女子の方が子どもの頃から政治家を目指す選択肢を選択できないように仕向けられているのはおおむねナッジの結果です。親や教師が「女子は政治家になってはいけない」と強いていることは今の時代にはあまりないでしょうから。

であるなら、女子でも政治家を目指すのを増やすように仕向ける環境を作っていくのがソーシャル・ナッジです。あくまで自身で決定することを尊重です。こちらは個人主義的、普遍主義的手法です。

そりゃ、手間も時間もかかりますが、強制的数字合わせは反発を生むし、望まない人が政治家になる、つまりはテレビタレントが再就職先として政治家になるようなケースが増えるだけです。

 

 

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