松沢呉一のビバノン・ライフ

少なくとも数万人のユダヤ人を死に追いやったチンコの皮—包茎復元計画[13]-(松沢呉一)

『ユダヤ人を救った動物園』で遂に見つけたナチス時代の割礼の記述—包茎復元計画[12]」の続きです。

 

 

 

元ネタを辿る

 

vivanon_sentenceユダヤ人を救った動物園』の著者であるダイアン・アッカーマンは、生き残りのユダヤ人にユダヤ人判定法としての割礼のことを聞いたのではありません。

巻末の参考文献リストを確認したら、引用部分ディルク・シュルタイス(Dirk Schultheiss)という人物の論文「Uncircumcision: A Historical Review of Preputial Restoratio」が元ネタでした。筆者はドイツの泌尿器科医です。circumcisionは割礼。通常uncircumcisionは割礼をしていないことですが、この場合は割礼していない状態に戻すことかと思います。

こちらで読めます(英語です)。ダイアン・アッカーマンの記述はほとんどがここから拾ったものでした。

そもそも「ダイアン・アッカーマンは、この論文にどうやって辿り着いたのか」って疑問があります。ナチスに関する資料は膨大ですから、たまたま行きつくことはまずなくて、彼女も私同様に、「ユダヤといえば割礼、ナチスがそれを判定基準にしていなかったはずがない」というところから検索したのではなかろうか。

さすが著者はサイエンスライターです。エロライターかサイエンスライターが気づくポイントです。あとは医学者とユダヤ教徒と風俗嬢。

ディルク・シュルタイスの論文「Uncircumcision」は紀元前から始まった割礼修復手術から、現在の割礼反対の動きまでを概観した内容で、現在行なわれている修復手術と修復方法についても、軽く触れてます。これによると、現在はテープで固定するという方法がとられているようです。

包茎復元を目指す私ですが、どうもおかしいと思っていたのです。風呂に入った時に皮を伸ばす努力はしていて、少しは伸びたと思うのですが、すでに限界になったと思えて変化がなく、最近はさぼってます。亀頭が敏感になったとも思えないので楽しみもない。

風呂で短時間引っ張るくらいじゃダメなんですね。重りをつけっぱなしにするか、テープで固定しなきゃ伸びないのです。さもなければ手術までして復元する必要がない。

Celsus’ first method of “Decircumcision” (after: Rubin, J.P. Celsus’ Decircumcision Operation. Urology 16: 121, 1980). ディルク・シュルタイスの論文より、アウルス・コルネリウス・ケルススの『医学論』に掲載された包皮修復方法を図像化したもの。decircumcisionは包皮復元のこと。つまり、ユダヤ迫害の歴史とともに手術はなされ続けたのであり、この頃から包皮がないことはユダヤ人であることの証拠になったのです。

 

 

包皮がないとその場で処刑

 

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割礼された皮を戻す方法と歴史的背景については英語版Wikipediaの「Circumcision controversies」にも詳しく出ています。しかし、ここにもナチス時代のことは書かれていません。

そちらについての記述について、ディルク・シュルタイスの「Uncircumcision」から遡ると、その先の元ネタは戦争が終わって間もなく出された複数の本です。最重要と思われる本では、医師や手術を受けたユダヤ人にも取材しているらしく、ネットで全文公開されているのですが、ヘブライ語です。自動翻訳にかけられないのでお手上げです(自動翻訳にかけられても、ヘブライ語からの翻訳は精度が低い上に、右から左に書くため、文字の配列が読みづらい)。

わかった範囲でまとめておきます。

 

 

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