松沢呉一のビバノン・ライフ

南アのスラムと歌舞伎町のホスト—ベルギーで異常に多い死亡者が出た理由[追加編 2]-(松沢呉一)

第1波と第2波の死亡者数の変化—ベルギーで異常に多い死亡者が出た理由[追加編 1]」の続きです。

 

 

ロックダウンしたにもかかわらず

 

vivanon_sentence前回見たように、南アフリカはすでにもう手がつけられないかと思います。

政府は何もしなかったのではなくて、研究者たちの反対があったにもかかわらず、まだ感染者が少なかった3月末から厳しいロックダウン措置をとって、買物以外の外出は一切禁止で、警察はゴム弾まで使用。

当初は3週間の予定が5週間に延長され、これによって経済が破綻して、もともと失業率が高かったのに加えて300万人の失業者が出ています。これ以上のロックダウンはできず、現在は再度学校を閉鎖しているのと、マスク着用を義務化しているだけです(公共交通と店舗を含む公共の建物内と広場での着用で、違反は懲役もあり)。

ロックダウンの最中にも徐々に感染者が増え出していることがこの国の特性です。これはスラム街を中心とした貧困層の感染が中心とされています。

各家庭に水道が敷設されているわけではないため、頻繁に手洗いをすることもできない。

ロックダウンしたところで狭い家に多数が住む環境では感染は避けられない。隣近所との関係も強くて、隣家への感染も避けられない。この層は病院にもなかなか行けない。

こうなることは目に見えていて、だから反対意見もあったのに、国情を考えずにWHOの画一思考に踊らされました。

※2020年7月24日付「africanews

 

 

全体主義国家ならいざ知らず

 

vivanon_sentenceできることがもうなくて、南アの研究者も、感染者はこのまま100万人を超えて、死亡者は5万人に達すると言っています。

全体主義国家であれば、ナチス時代のゲットーのようにスラム街から住民を出られなくして、その内部だけで感染を留めて、それ以外のエリアの対策をすることもできましょう。ナチスの時代は「ユダヤ人は腸チフスをばらまく」という理由でした。

中国共産党だったら、ウイグルやチベットでやりかねまい(政府発表を信じる限り、これらの地域では感染者は少ないのですが、ウイルスを名目とした弾圧はいっそう強まっているようです)。

ロックダウンをすることで感染者増大の時期を少し後ろにずらせた分、医療崩壊は少しは緩和されたかもしれないですが、その程度の効果しかなかったと言わざるを得ません。

遅かれ早かれこうなっていたのですから、であるなら、経済的破綻を招かなかった分、ロックダウンをしない方がまだよかったのではなかろうか。とりわけ貧しい層は経済的ダメージとウイルスによるダメージを重ねて受けていて、片方だけの方がまだまし。

※2020年7月27日付「BBC」 表面に出る数字だけでは南アの現実は理解できないという内容。この記事の最後にマスクの話が出ていて、南アでは他にできることがないってこともあってマスクは徹底しているのですが、効果があるとは思えず。写真では子どもがフェイスシールドをつけています。

 

 

貧困層はウイルスに弱い

 

vivanon_sentence以上のことから学べるのは「貧困層でウイルスは拡散しやすい」ってことです。

ここまで見てきたように、スウェーデンやドイツ、米国では、移民や外国人労働者の間で感染が拡大した事実があります。しかし、これは移民だから、外国人だからではなく、貧困だからだと考えた方がよさそうです。

 

 

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