松沢呉一のビバノン・ライフ

7時間フェイスシールドをつけてみた日(下)—マスクよりもフェイスシールド[21]-(松沢呉一)

7時間フェイスシールドをつけてみた日(中)—マスクよりもフェイスシールド[20]」の続きです。

 

 

欠陥実験の結果

 

vivanon_sentenceこの記事をお読み下さい。

 

2020年9月2日付「GAGAZINE

 

こういう記事を読むと、「なーんだ、フェイスシールドは効果が薄いのか」と早とちりする人たちがいそうです。

この実験は「フェイスシールドはN95マスクよりもウイルスの拡散を防ぐ効果が低い」というものであって、その辺で売られているマスクだとどうかはわかりません。「なーんだ」と思っていいのはN95マスクをしている人だけ。

また、一般に使用されているマスクと違い、N95マスクもフェイスシールドも感染させないことだけを目的にするものではありません。感染しないことをも目的にしたものです。この実験は「自分が感染していたとしたら」の仮定においてのみ有効であり、「自分が感染していないとしたら」の視点はゼロ。「なーんだ」と思っていいのは、自分が感染している人だけ。

目からの感染はN95マスクでも防げないので、その点を考慮しないと、比較することはできないのです。

こんな実験では、JAMAの論文にあった、ヘルスワーカーの19%がサージカルマスクをしていても感染した事実、フェイスシールドをしたら感染者がゼロになった事実の説明ができない。ヘルスワーカーは全員陰性だったところから始まっているんですから、この実験の想定外。

類似した実験は以前からあって、いつまでマスク幻想を高めるだけの実験をしているんだか。暇か。目からの感染がどの程度あり得るのかの実験をした方がはるかに有意義だと思いますが、こちらの実験は面倒なんでしょうね。今のところひとつとしてないと思います。長時間屋外および屋内でつけた場合に支障があるかどうかを実験している私の方がまだしも有意義です。

では、続きをお読み下さい。

 

 

「勘読書」ができない

 

vivanon_sentence砂町銀座で買い食いをして、底に穴のあいたサンダルを買い替えて、新宿に移動。

行きの電車ではドアのところに立っていたので、フェイスシールドを上げて本を読んでいたのですが、新宿までの都営線は空いていたので、シートに腰掛けて、フェイスシールドをしたまま読書。ところが、読めない。

私は老眼鏡をせずに勘で本を読むワザを会得していることは前にお伝えした通り。細かい漢字は全部黒い四角になるのですが、前後の文章で漢字を勘で読み取ります。

それができないのです。全体がぼんやりします。フェイスシールドをしていても視力が落ちる実感はないのですが、ギリギリのところで読んでいるので、意識できない、わずかなくすみがあるだけで読めなくなるみたいです。

汚れているせいかもしれないと思って拭いたのですが、やはりダメです。老眼の方はおわかりのように、暗いところでは字が見えなくなります。はっきりとは意識できない程度ではあれ、フェイスシールドで明度が落ちているかもしれない。

結局、老眼鏡をかけた上からフェイスシールドをつけて読書しました。

自覚はなくても、フェイスシールドをかけ続けていると、目に負担がかかっているでしょう。ここまで「透明度が高い」「低反射」と銘打っているフェイスシールドを取り上げてきましたが、そういうメーカーのものの方が目の負担が少なくて済みますので、長時間仕事でつけなければならない人は質の高いシールドを選んだ方がよさそうです。

念のために言っておくと、長時間つけて歩き回り、電車に乗っても、ジロジロ見られたりすることはないです。すれ違い様に見る人もいますが、チラッと見るだけです。自分が思っているほど他人は自分に興味はないですから。

※これは新大久保。これが今まででもっとも安い。500円の商品は残り少なかったですがですが、600円、700円はまだまだありました。値が高い時期に仕入れたと見えて、今も千円以上で売っている店もありますが、最近はスーパーでも千円を切ってます。一時は3千円を超えてましたけど、適正価格は千円以下。アルコールも安くなっていて、私は乳首のみならず、ゴキブリにもアルコールをかけているため、使用量が多く、安いのは助かります。アルコールでゴキブリは死なないですが、動きが悪くなりますので、そこを狙って潰します。霧状ではなく、一直線にピューと出るタイプのスプレーがゴキブリには最適。火のついたゴキブリが家中を走り回って大惨事になりかねないので火気厳禁。

 

 

会場へ

 

vivanon_sentenceフェイスシールドをつけたまんま会場へ。入口でメガネタイプのフェイスシールドが配布されて、8割くらいの客はつけてました。

シールドをメガネ状の部分につけるのにちょっと手間がかかるので、それが面倒という人もいたでしょうし、マスクをしているので十分という人もいたでしょう。演劇とは違って、演者が声を出すことはほとんどなく、せいぜいムチで叩かれた時に「ウッ」と声を出す程度です。1人は全頭マスクをつけてましたし。

しかも会場は天井が高く、奥行きがあって、客と演者の間に十分な距離があります。客には見えない奥に戸があるので、換気もできます。

 

 

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