松沢呉一のビバノン・ライフ

ロックダウンによる餓死者—帰国した殺人犯から考えたこと[4]-(松沢呉一)

ロックダウン反対集会の呼びかけをしただけで手錠をかけられた豪の妊婦—帰国した殺人犯から考えたこと[3]」の続きです。

 

 

感染者数で世界2位となったインド

 

vivanon_sentence南アでロックダウンは必要だったのか?—帰国した殺人犯から考えたこと[1]」の補足をしておきます。あの回に、国連食糧農業機関(FAO)と国連世界食糧計画(WFP)作製によるマップを出しましたが、あのマップで飢餓のホットスポットに指定された国々の現状をひとつひとつ見ていくと、深刻すぎて途方に暮れます。

原因は複合的で、ウイルスとその対策だけでそうなっているわけではないですけど、もともと飢餓状態にあった国がロックダウンしたことによって経済が破綻して、飢餓を加速させる結果になっています。食い物がない上に、食い物があるエリアでも金がないので買えない。食糧確保のための内戦や他国への侵攻も危惧されています。

貧困とは言えない国はホットスポットに入れられていませんが、それらの国でも貧困層は飢餓に瀕しています。

たとえばインド。感染者数が増え続け、先頃ブラジルを抜いて、米国に次ぐ世界第2位の感染大国となりました。人口が多いですから、2位になったことにはさしたる意味はありませんが、人口が多い分、まだまだ増える可能性があります。

政府が何もしていないのではなく、インドのロックダウンは3月25日に始まって、5月いっぱいまで延長され、以降は段階的にゆるめられながら7月まで続きました。

インドにはWHOの方針に反対し、ロックダウンにも反対している研究者がいたのですが、感染が激増することは予測できていたため、私もロックダウンはやむを得ない判断だろうと思ってました。

しかし、住環境を考えたって感染から逃れられない層が多くて、感染者数の推移を見ても、その効果があったようには見えません。ロックダウンしてもしなくても一緒、だったらしなかった方がまだよかったと思います。

なにしろ、インドは今年になってからウイルスと中国と経済破綻のみっつの厄介な敵と闘っていて、そのうちのロックダウンによる経済破綻だけでも避けるべきでした。

※2020年9月8日付「worldometers

 

 

インドの餓死者

 

vivanon_sentenceインドでは、食糧配給が滞っていることを前に指摘しました。生産も輸送もロックダウンによって制限されたためです。

おそらくインドではロックダウンによる餓死者が出ているだろうと思って検索したら、やはり出てました。5月の記事です。

 

2020年5月3日付「THE HINDU

 

 

インドの研究者などによるチームがロックダウン中の国内各言語の報道をチェックしたもので、300名が餓死、過労、自殺などによって亡くなっていたそうです。この調査はロックダウンから約1ヶ月間のものです。1日10名程度報道されていたことになります。

ロックダウンによるものなのか否かを報道だけで正確に判断することは難しいですが、そうと判断できるものだけをピックアップしたものだと思われます。もちろん、報道されないものはこの何倍もありましょう。

 

 

 

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