松沢呉一のビバノン・ライフ

決まりを守らず逮捕されたNYの高校生と中国の任志強—「決まりだから守れ」は全体主義への道[1]-(松沢呉一)

 

 

リモート授業の日に登校して逮捕された高校生

 

vivanon_sentence中国化する世界と闘う高校生。

 

リモート授業の日の登校はダメ NY州で高校生逮捕

[2020/09/11 19:51]

 

新型コロナウイルスの感染対策のため登校してはいけない日に登校したため、アメリカで高校生が逮捕されました。

ニューヨーク州の高校に通う17歳の少年は、8日がリモート授業の日だったにもかかわらず学校に登校したため、5日間の停学処分となりました。しかし、少年は9日も10日も学校に通い続けたため、不法侵入の疑いで逮捕されました。少年は「学校でスポーツ観戦したいし、クラブに参加して課外授業も受けたい。すべてを楽しみにしてるんだ。以前の様にすべてが元通りに再開してほしいだけだ」と話しています。逮捕後も少年は毎日、通学できるまで戦い続けるとしていますが、同級生の間からは「無責任で利己的」との批判が上がっているということです。

——2020年9月11日付「テレ朝ニュース

 

 

一読して「ん?」と思いました。米国の場合、こういうことをする生徒は堂々と名前を出して顔も出してやるものです。なんで学校名も個人名も出ていないんだろう。銭湯か美容院で小耳に挟んだ噂話をニュースにしているんじゃないんだから、もうちょっと具体性があってよさそうです。

それと、同級生の意見が厳しすぎないか。無責任で利己的」と突き放す同級生もいましょうが、「彼の行動は支持できないけど、逮捕するのは行き過ぎだ」「彼のことは尊敬しているよ」といった、いくつかの意見が出ている中で、この生徒の行動を否定するような意見をあえて拾ったのではないか。

 

 

「無責任で利己的」と言っている同級生などいない

 

vivanon_sentenceどうも変だとの勘が働いて、英文記事を探しましたさ。

 

 

2020年9月10日付「THE HILL

 

 

彼はニューヨーク州ロングアイランドにあるウィリアム・フロイド高校(William Floyd High School)のマーヴェリック・ストウ(Maverick Stow)君。顔も出してインタビューを受けています。

優秀な生徒っぽくて、新型コロナのために、長期の予定が全部狂ってしまったことが悔しくてしょうがないらしい。両親も彼の行動を事前に教えられて、支持しているとのことです。

同級生の意見は見出せなかったのですが、たしかに「無責任で利己的」(irresponsible and selfish behavior)と言っている人物(というより団体というべきか)はいます。the school districtです。「学区」です。日本の学区は、ただの行政上の区分の意味合いしかない印象ですが、米国ではもう少し実体があって、行政と学校による共同体みたいなもので、その学区が「無責任で利己的」と言っていると報道されてます。

 

 

next_vivanon

(残り 1616文字/全文: 2854文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ