松沢呉一のビバノン・ライフ

スウェーデンの戦略とカロリンスカ研究所—T細胞による細胞性免疫[中]-(松沢呉一)

スウェーデンは集団免疫を獲得したのか?—T細胞による細胞性免疫[上]」の続きです。

 

 

まだわからないことだらけながら

 

vivanon_sentence年寄りと病人が重症化して死にやすいのも細胞性免疫が関わっている可能性があるのですが、詳しくはわかっていません。肥満体の方が重症化して死にやすいことも細胞性免疫が関わっている可能性があるのですが、詳しくはわかっていません。男の方が致死率が高いことから、「男は喫煙をするためだ」なんて、まことしやかに解説する人たちがいましたが、これはX染色体がT細胞に関与していて、T細胞の働きが違うためらしい。でも、詳しくはわかっていません。

新型コロナにおける細胞性免疫説はなお仮説の領域を出てませんが、この研究は世界中で進んでいて、アメリカ、シンガポール、ドイツ、イギリスなどから続々論文が出ています。言っていることは一緒です。つまりは対新型コロナウイルスの免疫は、抗体だけが決定しているのではないってことです。

T細胞が細胞性免疫を発揮することはわかっていたのに、どうして新型コロナウイルスでは考慮されなかったのかと言えば、ウイルスの型が違うために、機能しないと思われていたようです(なのかどうかもわからん)。

新型コロナウイルスの抗体は新型コロナウイルスにのみ有効であるのに対して、別の型であってもコロナウイルスに感染して作られるT細胞は新型コロナウイルスに対しても有効というのが免疫暗黒案件解釈の有力説になってきています。

新型コロナ登場以前に、ただの風邪として流行していたコロナウイルスを人体は記憶しています。東アジアでコロナウイルス対応型T細胞を持っている率が高いため、感染しない、あるいは感染しても症状が出ない、症状が出ても軽症で済むために、重症化する率が低く、よって死亡者が少ない。

辻褄は合ってましょう。

※日本がん免疫学会の「細胞性免疫・エフェクター細胞」の図版を借りました。これ以上簡単にはできないというくらいにシンプルに説明していて、このページはわかりやすいです。

 

 

カロリンスカ研究所の画期的研究

 

vivanon_sentence京大の上久保靖彦特定教授らの研究をざっと理解して(理解しきれていないけど)、「あとは、東アジアと、対照国のコロナウイルス対応型T細胞保有率を調べて比較し、さらに重症化した人も調べればいいんでないか」と思っていたのですが、これを調べるのは大変手間がかかり、そう簡単ではないらしい。

とは言え、人員と予算と技術があればできる話であり、生身の人間のT細胞を検査した上での論文が出てきています。

8月に、スウェーデンのカロリンスカ医科大と附属研究所の研究者たちによる画期的な論文がライフサイエンスの学術誌「CELL」に発表されます。

こちらで読めます。

 

 

 

 

私は読んでもわかりませんので、こちらのまとめカロリンスカ研究所のサイトで理解できるところを理解しただけです。

それでも画期的だと思えたのは、200人以上のT細胞を検査したものだからです。

 

 

next_vivanon

(残り 2576文字/全文: 3862文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ