Abema Primeの議論にならない議論を補足する—要友紀子の「性風俗ではクラスターが発生していない」発言-(松沢呉一)
「いかに議論が成立しないか」を確認できる点のみ価値あり
昨日、SWASHの要友紀子がAbema Primeってえのに出ることは知っていたのですが、その時間は寝てまして、さっきアーカイブを観ました。あと数日は観られるようなので、お早めに。わざわざ、観るほどのものではないですけどね。
全然議論になってない。性風俗やセックスワークについてはひとつひと絞っていかないと議論にならないという100年前からの教訓がまるで活かされていない。この場合は「将来なくなった方がいいか」なんて個人のどうでもいいファンタジーはカットして、持続化給付金に絞るべきでした。
AVに弱い私でも紗倉まなって名前は知っているけど、初めて顔を認識しました。彼女は問題をちゃんととらえていますが、議論にならず、ちょっとイラついていたかも。
要友紀子の発言はひろゆきの茶々でたびたび打ち切られてしまって、言いたいことが言えてなかった感があります。そのため、大事な事実が伝わってないかと思います。
要友紀子の発言で私が大事だと思った点はいくつかあるのですが、ここでは「性風俗ではクラスターが発生していない」という指摘だけを取り上げます。前提として共有すべき点が無視されて、秋風に飛ばされて宙を舞う枯れ葉のごとく地に足のつかない論がはびこってしまう一例を確認していただければよろしいかと存じます。一事が万事これなんですよ。
青森市のデリヘル嬢と警察官の感染例
長らく国内報道のチェックを疎かにしている私ですが、青森の警察官がデリヘル利用で感染した件くらいは知ってます。
改めて確認しました。
デリヘル嬢の例は青森市の5例目、警察官は7例目です。
2020年7月16日付青森市保健部青森市保健所発表
デリヘル嬢の濃厚接触者の結果はこちら。
2020年7月19日付青森市保健部青森市保健所発表
警察官を除いて全員陰性だったようです。
彼女自身、店での感染ではなく、県外からの持ち込みです。
感染が出ても黙っている人たちがいるでしょうから、感染はもっと出ているはずだと思い込みで語る人もいるでしょうが(ひろゆきのように)、青森市の感染例は35件しかなく、全員チェックしました。県内感染が少なく、県外での感染と思われる人が多いのが特徴。感染経路を隠している多数の人がいて、実際にはクラスターが発生していると思わせるような点は見当たりません。
彼女が濃厚接触した客の感染は1名しか確認できなかった事実に基づいて議論しないと話にならんでしょ。
警察官がその事実を隠して勤務し、なおかつ青森県では感染例が少ないために大きな話題になっただけのことで、現実が100倍にもフレームアップされて、「性風俗は怖い」「性風俗では多数が感染」ってことになったわけです。
岐阜市と徳島市の例も確認
念のため、他の例も見てみましょう。同じ時期に岐阜県でも風俗嬢が感染。
2020年7月19日付岐阜市発表
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