松沢呉一のビバノン・ライフ

フランスも対策すべき点を無視して飲み屋を規制—ポストコロナのプロテスト[7]-(松沢呉一)

営業時間の短縮は混雑を招くだけで予防効果がないことを明らかにした英国—ポストコロナのプロテスト[6]」の続きです。

 

 

パリの飲食店プロテスト

 

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選別的ロックダウンの皺寄せを受ける人々のプロテスト—ポスト・コロナのプロテスト[4]」に書いたように、スペインのマドリードでは感染者が多いエリアに絞ったロックダウンをした結果、貧困層や移民が住むエリアがその対象となって、強い反発が生じています(スペインの方式を当初「選択的ロックダウン」としていましたが、これだと、国民側が選択するようなゆるいニュアンスになるので、「選別的ロックダウン」に直しました)。

そこに、フランスは飲食店規制の指定範囲が都市単位なので、「スペインよりまし」と書いてしまいましたが、フランスでもプロテストが起きていますので、補足しておきます。

以下は、先週のパリの行動。

 

 

フランスでは屋外でも公共空間のマスク着用が8月末から義務づけられたので、全員マスクをしています。そうじゃなくても、飲食店ではマスクで安全イメージを出したいでしょう。これはマスクの効用。

しかし、フランスではマスクをしている人がそれ以前から多かったこともあって、マスク義務化の効果はまるでなかったと思われます。効果が出なかったから、次の対策をとるしかなくなったわけで。

マスクをする習慣のない国では、咳が出ていてもマスクをしないでしょうから、義務化の意味はあるとして、「咳が出たらマスクをする」という程度に浸透した国ではそれ以上に徹底する意味はないとしてよさそうです。

ところで、あの鍵はあとで拾ったのでしょうか。あるいはそのまま捨てていい合鍵を作ったのか。本物の合鍵だと泥棒に入られてしまいますので、使わなくなった鍵でしょうか。どうでもいいか。

 

 

そもそも意味があるのか?

 

vivanon_sentence9月28日から10月11日まで、感染者の多いフランスの主要都市では、一部は全面営業停止、それ以外は英国同様、飲食店は夜10時までの時短営業になりました。全面営業禁止に比べれば影響は少ないですが、これも時間を軸にした選別的ロックダウンです。

実施に先だって抗議をしているのが上の動画ですが、飲食店に関する法律までを理解しないと正確なことがわからないため、以下、間違いがあるかもしれないですが、ご容赦ください。

パリでは主に酒を出す店と、補助的に酒を出す店とが区分されて、前者のみに営業時間短縮が適用され、食事をメインにしたレストランは営業時間の制限はないながら、午後10時以降、午前6時までの酒類の提供ができなくなったようです。料理を食ってもワインはなし。

日本で言えば深夜酒類提供営業のみ夜の10時までの営業で(もはや深夜酒類提供営業ではないですが)、それ以外の飲食店も10時以降は酒類を出せないってことです。フランスで深夜酒類提供営業に該当する法律上の区分があるのかどうかわからないのですが、リカーライセンスがあるので、ライセンスの種類に基づいているのかと思ったら、リカーライセンスとは関係なく施行すると当局は言っており、この境界がどこにあるのかについて混乱も生じているようです。

「酒は娯楽であり、生活に必須ではない」という判断もありましょうし、「酒を飲むと判断力が鈍って距離を保てない」ってこともあるでしょうけど、飲み屋は営業時間がほとんどなくなって、これではやっていけるわけがない。

酒類の持ち帰り用の販売も夜10時から朝6時までは禁止となり、路上での飲酒も夜10時から朝6時までは禁止。英国のようなプロテスト宴会もできないのです。

さらには路上パーティを封じるため、この時間帯に路上で音楽を流すこと、店舗が公道にまで聞こえるくらいの音量で音楽を流すことも禁止。

仲間内で集まっていいのは10人まで。不特定多数を集めるコンサートや演劇は可能ですが、1,000人を超えるイベントは禁止。ただし、屋外のデモや集会のうち、すでに申請済みのものはそのまま実施できるようです。

英国での「営業時間の短縮には意味がない。むしろ営業時間を長くした方が混雑を避けられる」という指摘は、時間短縮によって「だったら行かない/行けない」という客もいるので、つねに成立するわけではないですが、何度か書いていたように、日本でも銭湯が時間短縮をしたために、早い時間は混み合うようになった傾向があって、同じことが起きた飲食店もあるでしょう。銭湯は混んでいいとして、時間短縮は密集を作り出した可能性もあるのです。

※2020年9月26日付「Le Figaro」 飲食店への規制以外の規制にも触れているので、おおむねこの記事を参考にさせてもらいました。

 

 

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