松沢呉一のビバノン・ライフ

18カ国からの報告集を読む—パンデミックとメディアの関係[1]-(松沢呉一)

 

 

パンデミックのメディアへの影響についての報告集

 

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マスクによる環境破壊とエクスティンクション・レベリオン—ポストコロナのプロテスト[1]」に書いたように、環境団体XR(エクスティンクション・レベリオン)は、この9月の連続行動のひとつとして、本拠地ロンドンで複数の新聞を請け負っている印刷所に対する業務妨害をやり、各方面から批判されました。私もこの行動に呆れ果て、「気に食わないメディアは力で潰す」と考えるこの団体の独善的体質は中国共産党と同じと書きました。

その際に「ほっといたって新聞は消える」とも書きました。無駄なエネルギー消費はやめろ、XR。この団体は他にもさまざまな問題点があって、プロテスト好きの私でも、支持ができないどころか、批判の言葉しか見つからない。

実際、ロックダウンによって相当数の新聞は経営困難に陥っているのではないか。正確にはもともと経営困難に陥っているところにとどめを刺したのではないか。

日本の新聞は宅配で支えられている上に、ロックダウンなんてバカなことをしなかった(法律上できなかった)からまだいいとして(と言っても各紙大幅に部数減ですが)、新聞の宅配のない国で、外出しない、通勤しないとなれば買う機会が激減し、すでに廃刊になった新聞もありそうです。

そう思って検索したら、パンデミックがメディアに与えた影響について、世界18カ国の報告がまとめられていました(CoViD19 and the Media: Devastation or Renaissance?)。9月1日に発行されたものです。

それぞれの国の報告者がざっと状況を書いていて、報告の長さも違い、注目するポイントも報告者によって違う。また、報告内容も時期が必ずしも明示されていないため、横並びにして比較することが難しい内容ですが、読物として面白かったです。たいていメディアの悲惨話なので、XRじゃあるまいし、面白がっちゃいけないですが。

 

 

オーストラリアの112紙の新聞が紙版の発行を停止

 

vivanon_sentence多数の新聞がウェブ版のみを残して紙版を廃刊にし、多数の新聞社が人員整理を実施し、多数の新聞社が活動停止していることが十分読み取れます。紙の新聞を出し続けている新聞社でも週休1日だったのを2日にしたり、宅配サービスを新規で始めるなど、四苦八苦している様子です。

たとえばオーストラリアでは112の地方新聞が印刷を停止し、うち76紙がウェブ版のみの発行に転じ、36紙が完全に発行停止。オーストラリア全体で何紙あるのか書かれていないですが、英版Wikipedia「List of newspapers in Australia」によると、500紙程度出ていたようです(日刊とは限りません)。数の多さは国土の広さに関係しているのでしょう。

それでも大半は残っているわけですが、この数字は5月までのもので、これ以降さらに消えています。

また、スペインではほとんどの印刷された新聞は消失(この期間だけの発行停止なのか、永続的なものなのかは不明)。

※2020年5月28日付「abc net au」 153年の歴史のある地方新聞の紙版がなくなるというニュース。タイトルにあるNEWS CORPは多数の新聞を手がけるメディアの総合企業で、ここが続々紙版の廃刊を進めている。

 

 

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