松沢呉一のビバノン・ライフ

タイの反政府・反国王プロテストとスリーフィンガーズ・サルート—ポストコロナのプロテスト[10]-(松沢呉一)

ドゥダ・ポーランド大統領のホモフォビアとLGBTプロテスト—ポストコロナのプロテスト[9]」の続きです。

 

 

まさかのタイの反国王プロテスト

 

vivanon_sentenceタイでもプラユット・チャンオチャ(ประยุทธ์จันทร์โอชา)政権と国王であるワチラロンコン(วชิราลงกรณ)ことラーマ10世(รัชกาลที่ ๑๐)に対するプロテストが起きています。

 

 

 

 

ステージ上は除いて警察もプロテスターもマスク率9割以上。山手線並です。しかも、防塵マスクにゴーグルが多いのが特徴。ヘルメット姿も見られ、催涙弾やゴム弾を受ける気満々です。そこまではまだ至っていないのですが、これは香港プロテスターへのオマージュか。

「タイの人たちは王様が大好き」って印象があって、日本のタイ料理屋にもよく写真が貼ってありますが、その分、王室批判はタブーで、反王室派は密かに消されたりするらしい。

それが堂々国王批判まで至ったのはちょっとした衝撃でした(君主制まで否定しているのでなく、現国王個人への反発が大きそうなので、ここでは「国王批判」としておきます)。タブーにせよ、敬愛にせよ、とことん染み付いて内面化したものを乗り越えるのってよっぼどです。

もうひとつタイのプロテスト動画を観て気づくのは3本指です。これは仏教から来たものに違いなく、さすが敬虔な仏教徒の国だなあと当初私は信じて疑ってませんでした。

 

 

スリーフィンガーズ・プロテスト

 

vivanon_sentenceこの反政府運動がどこから始まったんだろうと遡ったら、反国王はポストコロナですが、反政府運動自体はもっともっと古くて、現政権に対するプロテストは2014年のクーデター以降ずっと続いていたんですね。

その映像を観ている時に、3本指はこの時から始まっていたことに気づきます。相変わらず、さすが敬虔な仏教徒の国だなあと。

そして、以下の動画を観て、「あー、そうだったのか。仏教は関係ないのか」とやっと理解しました。2014年のニュース番組です。

 

 

 

スリーフィンガーズ・サルートの元ネタは、映画「THE HUNGER GAMES」でした。

 

 

 

近未来、貧しい者たちが住む各エリアから生け贄が選ばれ、支配階層の娯楽のために、彼らが殺し合いをして1人だけ生き残るゲームが毎年開かれている。その死にゆく生け贄に対する感謝と別れと追悼の意味の挨拶が3本指。しかし、やがてこれが全体主義国家に対する反逆の印になっていき、やがてはスリー・フィンガーズ・サルートをやるだけで処刑されるように。ということらしい。

 

 

香港に通じるタイのプロテスター

 

vivanon_sentenceちょうどクーデターの直後にこの映画がタイで公開されたため、この挨拶が広がり、軍部は3本指を掲げるだけで逮捕すると発表し、事実、逮捕される者が出てきます。

これに対して、反政府の学生たちはこの映画を広げる運動を始め、チケットを大量購入して配布しようとしただけで逮捕され、映画は政府の圧力で上映中止に。

映画をプロテスターたちが真似し、軍もまた映画をなぞったのです。まさに映画同様の圧政と残虐がまかり通っていたのがタイであることを政府と軍が立証しました。

以来、この指が反政府の危険なシンボルとなり、ついに何千、何万の人たちが、コロナを経た7月から路上に出て3本指を掲げる事態に至りました。

この過程を知って以来、タイの人たちが3本指を掲げているのを観るだけで泣きそうになります。

 

 

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