松沢呉一のビバノン・ライフ

不安になる情報に食いつく人々の心理—パンデミックとメディアの関係[4]-(松沢呉一)

ドイツの「Bild」と日本の「羽鳥慎一モーニングショー」—パンデミックとメディアの関係[3]」の続きです。

 

 

 

なぜ人は不要に不安になりたがるのか

 

vivanon_sentence恐怖を煽る報道は、フェイクニュースに食いつく人たちをも増加させたのみならず、メディア自身がフェイクを作り出す効果ももたらしました。煽ることでそういった報道を求める人が増え、視聴率やアクセスが増えるから、いよいよ煽る記事が求められてフェイクに至る。メディアと視聴者や読者との共振です。

こういう煽り報道に食いつく人たちがいるから、煽り報道が増えるのです。メディアだけを叩いても解決しない。そういう記事に食いついてしまった人たちはなぜ食いついたのかを自身で検証して反省した方がいいと思います。

意味なく恐がってもしゃあないだろうに、意味なく恐がりたがる人たちの心理はどう説明できるのだろうと思って検索したら、以下の記事が大いに参考になりました。4月の記事ですけどね。

 

 

2020年4月14日付「BUSINESS INSIDER

 

この部分。

 

臨床心理学・犯罪心理学を専門とする筑波大学教授の原田隆之氏に話を聞くと、一見非合理に見えるこうした現象は、心理学的に説明できるという。

原田教授によると、まず「こうしたパンデミック(世界的大流行)の状況下で不安になったり、ストレスを抱いたりすることは正常な反応です」と語る。

不安な気持ちと「不安でいてはいけない、しっかりしなければ」という矛盾する心理状態を抱えると、人は心理的に不快に感じる(これを「認知的不協和」という)。

だからこそ、その不協和を解消するために、不安な気持ちを正当化してくれる情報を集めて納得しようとする。不安を煽るニュースを見たり、ハラハラドキドキする映画やドラマに没頭してしまうのも、そのためだという。

 

 

平静時に怖い映画を観る、怖い小説を読む、怖い音楽を聴く、ジェットコースターに乗る、バンジージャンプをする、といった行動と、不安時に不安を強化する情報に食いつく行動とはそれぞれ別の心理に基づくと思いますが、後者についてはこの解説でだいたい納得できました。

 

 

自ら招く不安地獄

 

vivanon_sentence相反するふたつの心理を抱えたままだと居心地が悪いですから、それを解消すべく片方の心理を打ち消したり、ごまかしたりするなどして居心地の悪さを消すことは、程度の違いはあれ、誰しも経験があろうと思います。この対立する心理を抱えた状態を「認知的不協和」とし、それを解消する人間の調整法を説明するのが認知的不協和理論です。

これはしばしばごまかしでもあるのですが、安定するための知恵でもありますから、自覚的に使っていけばいいと思います。

 

 

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