エチオピア人がイスラエルでプロテストをする事情—ポストコロナのプロテスト[23]-(松沢呉一)
「イスラエルで感染を拡大したのはユダヤ教超正統派—ポストコロナのプロテスト[22]」の続きです。
イスラエルにおけるエチオピア系ユダヤ人に対する差別
ここまではざっと大きな流れを見てきましたが、小さな動きながら、ものすごく気になったプロテストがありました。
イスラエル版BLMであり、ここにエチオピアからの参加者がいました。
エチオピア・コーヒー、うまそう。
彼らは ジョージ・フロイドと並んでソロモン・テカ(סומונטקה)という名前をコールしています。ソロモン・テカは19歳のエチオピア系イスラエル人です。昨年6月30日、非番の警官に射殺されました。
警官は、ソロモン・テカが子どもを殴っているのを見てそれを止め、麻薬を所持していることを疑って捕まえようとしたのですが、彼が石を手にしたため、足を狙って打った銃弾が跳ね返って体に当たったと発表しています。どこまで本当かわからない。
麻薬は見つかっておらず、半月以上経ってから、検死の結果、血液中からアルコールと大麻成分が発見されたと発表されますが、ソロモン・テカの家族はこれを否定し、時間が経ちすぎていることからも怪しいとされています。
今年の2月から裁判が始まっています。どこまで公正な裁判が行なわれるのかわからないながら、現場には警官の家族を含めて多数の人がいたので、事実関係は明らかになるでしょう。
ソロモン・テカを含めて5年間で6名のエチオピア系が警察に殺されており、20年間では11人目です。なおかつ日常的な暴力にさらされているため、ここには「エチオピア系は殺していい」という意思があるとしか思えない(これだけではなんとも言えないですが、エチオピア系が不当に扱われていることを示す数字は次回出てきます)。
以下はたまたま防犯カメラに映っていたエチオピア系イスラエル人の日常。
彼は軍人ですよ。撃たれなかったからいいようなものの。
ソロモン・テカ射殺事件のプロテスト
こういった日常の上にソロモン・テカの事件があって、怒った人々がデモをしています。
これを見るとわかるように、プロテスターはエチオピア系だけではなく、むしろ彼らは少数派に見えます。
それにしても、昨今の反政府デモに対するよりも警察は乱暴です。これは警察を対象にしたプロテストであることとともに、エチオピアがからんでいるからじゃなかろうか。
夜の部ではさらに荒れます。
のどかに犬の散歩をしている人がいますが、彼がエチオピア系イスラエル人だと、「犬を警官にけしかけようとした」として射殺されます。
この場合は暴動になったところで筋は通ってます。適切なプロテスト。この騒動で136名が逮捕されています。
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