マスクをしてなくて警察に殺された人と背中に火をつけられた警官—ポストコロナのプロテスト[25]-(松沢呉一)
「ベタ・イスラエルはエチオピアでもイスラエルでも差別され続けている—ポストコロナのプロテスト[24]」の続きです。
新型コロナでも殺人でも死ぬ人の多い国メキシコ
ここからはラテンアメリカです。
メキシコでは、3月下旬以降、美術館、映画館、バーなど、多数の人が集まる場所が閉鎖されていて、4月半ばから州単位で夜間外出禁止が次々と実施されます。ラテンアメリカ全般に、アジア、ヨーロッパに比して、感染者が出て拡大するのにタイムラグがあって、準備期間があった分、感染拡大してからの対策は迅速だったのですが、メキシコではロックダウンの効果があったとは思えず(これもラテンアメリカ全般ですが)、一部の自治体を除いて6月まで継続します。
その間も順調に感染者は増えます。
2020年10月17日付「worldometers」
人口は日本とほとんど同じで、感染者は85万人。世界第10位ですが、死亡者が多いことがメキシコの特徴で、こちらは世界第4位。
致死率が高いのは当然院内感染が疑われます。調べてみたら、4月の段階でメキシコシティの2つの公立病院で計60人の医師、看護師が陽性と報じられていて、8月の時点で1.300人の医療関係者が亡くなったとされています(半数が医師)。死に過ぎですし、それに伴って患者も亡くなっているわけです。
こういうところの対策をとることが最優先であって、市民の生活を規制したって無駄。約2ヶ月もロックダウンが続いたため、経済は縮小し、これ以上は耐えられなくなってのロックダウン解除がなされるのですが、これ以降もいくつかの規制は残ります。
マスクをしていないと、マスクをしていない警官に手錠をかけられる
ロックダウン中は大きなプロテストはなかったのですが、規制がゆるめられてきた6月に大きな動きがありました。
メキシコの多くの州では、住居以外のすべての室内、室外でのマスク着用が義務づけられていて、ハリスコ州もそのひとつで、4月19日以降義務づけられ、最大36時間の拘束と罰金刑になります。
詳しくは次回やりますが、メキシコでは麻薬カルテルが力を持って、長年内戦と言っていい状態が続いています。麻薬カルテルは武装し、警察官も多数殺されています。ロックダウン中も関係がなく、むしろロックダウンによって酒が手に入りにくくなった地域での需要が伸びて、彼らは稼ぎ時です。そのため、麻薬カルテル同士の勢力争いが激化。そういった地域以外では犯罪数が減少して暇ですから(置き引きやスリなど軽微な犯罪が減っただけで、強盗や殺人は増えている。詳しくはまた)、警察官はマスクをしていない人を探しては拘留して罰金をかき集めてました。
以下のような動画も投稿されます。
“Vine a comprar mi comida. ¿Por qué me quieres llevar?”, expresa tapatío luego de que policías de Alfaro lo detuvieran arbitrariamente
Nota completa: https://t.co/CdPzqc6t8Y pic.twitter.com/mlFTt85ACl
— Revolución 3.0 (@Revolucion3_0) April 29, 2020
マスクしていないだけで手錠をかけられて連行ですよ。しかも、警察官はマスクをあごに下ろしています。自分でってなんのためのマスクかもわからなくなっているくせに、逮捕はする。
マスクをしていないと警官が10人がかりで逮捕して殺す
5月4日、ハリスコ(Jalisco)州のイストラウアカン・デ・ロス・メンブリージョス (Ixtlahuacán de los Membrillos)という町で、30歳のジョヴァンニ・ロペス(Giovanni Lopez)さんが公共の場でマスクをしていなかったために警察に連行されます。
その時の様子。
この時、警察官は10人ほどいたらしい。ホントにやることがないのでしょう。翌日、親戚が彼を探しに行くのですが、病院に運ばれたと言われ、病院に行ったところ、病院に運ばれた時にはすでに死亡していたと告げられます。警察署でリンチされた模様。
(残り 1256文字/全文: 2972文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ