松沢呉一のビバノン・ライフ

メキシコのセックスワーカーが直面している危機は何億もの人が直面している危機—ポストコロナのプロテスト[28]-(松沢呉一)

警察がいるから犯罪が増えるメキシコの絶望的な構造—ポストコロナのプロテスト[27]」の続きです。

 

 

 

弱者は飢えて死んで行くしかないのか?

 

vivanon_sentence前提になる背景の説明が長くなりましたが、今現在のコロナ時代に話を戻します。

ウイルスに感染しやすいのは貧困層であることは各国で見られる現象です。また、ロックダウンによる皺寄せも貧困層に向います。仕事がなくなり、飢餓に直面しているのもこの層です。

トランチノランのサイトを見てもとくにメキシコ先住民に対する差別が増加しているという記述は見出せなかったですが、マイノリティ全体に対する暴力、人権侵害の増加が懸念されているとあります。

また、先住民の多くは土地を持たず、日雇い労働をしているため(おもに農業関係の日雇い)、失業者が急増し、食料品が高騰する中、最貧困層が多いモンターニャでは飢餓の危機に瀕しているとも指摘されています。

とくに人権侵害がひどいメキシコの先住民たちだからこそということがあるにしても、世界食糧計画が指摘するように、億を越える人々がコロナ禍によって飢餓に瀕しています。

前に世界食糧計画のマップで確認したように、その多くはパンデミック飢餓ではなく、ロックダウン飢餓です。ウイルスを制圧できると考えるWHOの妄想によって数千万人が餓死するかもしれない。つうか、すでに餓死は始まってます。やせ衰えながらも栄養失調で腹だけがパンパンに膨れた子どもの写真がすでにインターネットには出ています。

以前書いたようにセックスワーカーも同様に困窮しています。とりわけ高年齢の人々。

世界各国に共通することですから、メキシコを題材にして、久しぶりにまとめておくことにしました。

※2020年10月20日付「EL HERALDO」 セックスワーカーが日々暴力に晒されていることを取材したもの。警察は守るどころか、彼女たちからも金をせびっていくとあります。警官の背中に火をつけたくなる気持ちがわかります。

 

 

メキシコのセックスワーカー事情

 

vivanon_sentenceメキシコの日刊紙「ホルナダ(La Jornada)2020年8月31日付「Pandemia orilla a que más trabajadoras sexuales sean hostigadas」はコロナ禍によってメキシコのセックスワーカーがどうなっているのかを取材したものです。

 

 

政府からの支援が何もないため、セックスワーカーたちは働き続けるしかない。バーが閉鎖されて客を探すこともできず、外に立つしかなくなって、路上に人が増える。しかし、客は激減している。

若いセックスワーカーでも80パーセント収入が減り、年輩だと95パーセント減。額はもともと少なくても、常連が多い分、上の世代の方が減る程度はゆるやかなように思えてしまうのですが、仕事をやめていた年輩の人たちは、他の仕事がなくなって戻ってきているとあって、上の世代ほど競争が厳しくなっているのかもしれず、また、上の世代の客ほど感染が恐くて来なくなっていそうです。

 

 

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