松沢呉一のビバノン・ライフ

パンデミックに勝利したのは麻薬カルテルだった—ポストコロナのプロテスト[34]-(松沢呉一)

店で働く方が安全なのに街娼をする理由—ポストコロナのプロテスト[33]」の続きです。

 

 

麻薬カルテルとセックスワークとの関係

 

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部屋を個人営業のセックスワーカーが借りる方式じゃなければ、店という業態は「管理売春」になってしまいますが、外からの攻撃に対しては「管理売春」の方が安全。しかし、管理売春になると、必要なコストを抜くだけでも、搾取だとか言い出すのがいます。

そこで個人が集まってグループを組織して、グループ単位で場所を借りたり、ガードマンを雇ったりしても管理売春だと見なされたり、人身売買と見なされたりするため、結局個人がヒモをつけて自分を守るしかない。で、そのヒモに殺されたりするわけです。そういう事件もメキシコでは起きています。

日本でも昭和20年代にパンパンのグループが解体されて、ヒモに頼ることが起きました。さらに売防法によって、暴力団支配が進みました。

その結果をもって今度は「暴力団の資金源になる」と言い出すのが低劣な道徳主義者たちの糞論理。何がどうしてそうなったのかを見ようともしない。あるいはわかっていてそういうことを平気で言う。

メキシコでは麻薬カルテルが街娼たちからみかじめ料をとるようなことをしているのかどうか不明ですが、別のところでからんでいます。

中南米では貧しい国から比較的ましな地域に国を越えて移動するセックスワーカーも多く、ベネズエラ人セックスワーカーもメキシコで殺されています。

日本でもそうなのですが、本人が納得づくでブローカーに頼んで日本に入国して売春をしていたとしても人身売買ということにされてしまうため、「騙されてパスポートを取り上げられて働かされる」という人たちがどのくらいいるのかがわからなくされているのですが、ベネズエラとメキシコ間の移動を牛耳っているのも麻薬カルテルです。

ロックダウンによって人の移動ができなくなって、人身売買は激減したようですが。

※2020年9月2日付「Forbes Mexico」 2019年はメキシコで殺された人が37,315名だったのが、今年はロックダウンがあったにもかかわらず、4万人台に達するだろうとの内容。殺人の多くは組織犯罪によるもので、その対策をしてきたのが水泡に帰しました。PELIGROは「危険」の意味。

 

 

ロックダウンまで担当する麻薬カルテル

 

vivanon_sentence麻薬カルテルは麻薬だけを製造販売しているのではなく、組織対組織の抗争のみならず、人身売買、要人の誘拐や暗殺、強盗などの犯罪も手がけており、だからメキシコでは殺人事件が多いわけです。結局、麻薬カルテルを潰すしかなく、潰すには警察を浄化するしかない。

そもそも困難である上に、パンデミックによっていよいよ困難になってきています。

アンドレ・マヌエル・ロペス・オブラドール(Andrés Manuel López Obrador)現大統領は、麻薬カルテル撲滅対策を進めているのですが、パンデミックで後退したと言われています。

すでに書いたように、ロックダウンで世界的に飲み屋の営業規制と販売規制、屋外での飲酒の禁止が進み、暇でもありますから、ドラッグの需要が増えていて、麻薬カルテルはここぞとばかりに活動を活発化させています。

ロックダウンによって困窮している人たちに、麻薬カルテルが物資の配給を進めています。山口組が災害援助をするようなものです。あるいはイタリアのマフィアがロックダウンで困窮する店や企業に金を貸して支配を進めているようなものです。

 

 

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