トヨンのマチ金で働いていた人の話—性風俗で働かせる金融業者はまだしも良心的かもしれないと思った話[下]-[ビバノン循環湯 569] (松沢呉一)
「トイチのマチ金に手を出すのは案外真面目なタイプ—性風俗で働かせる金融業者はまだしも良心的かもしれないと思った話[上]」の続きです。
トヨンのマチ金で働いていたことのあるホステス
前回のヘルスでの話があってからしばらくして、たまたま悪質なマチ金で働いていたことのある女性と知り合いになった。今は飲み屋のホステスである。
驚いたことに、彼女が働いていたマチ金はトヨンだったという。トニ、トサンまでは知っていたが、トヨンなんてえのもあるんですなあ。
トイチだと、1ヶ月間、利息を払わないでいると、元金は13万円強になる。3ヶ月放置すると約24万円。法定利息でやっている金融業者であれば、1年放置したところで倍にはならないが、トイチだと、3ヶ月で元金は倍以上になる。
これでも十分すごいが、トヨンだと、1ヶ月で10万円が約27万円になり、3ヶ月ではなんと約200万円にもなる。
ここまでいくと、さすがに客はブラックばかりだったという。月5パーセント程度の利息も払えずにブラックになった人たちだから、トヨンから借りたら、いよいよ返せるわけがなく、あっという間に元金が膨らむ。
こういう悪徳金融業者は、客が女だったら売春島に送り込んだり、男だったらマグロ漁船に乗せたりすると言われがちだが、そんなバカなことは絶対にしないと彼女は言う。
「それって昔話じゃないですか」
今時、売春業者も前借(ぜんしゃく/先になにがしかの金を渡し、それを返済するまで働かせる)なんて出してくれなくなっている。逃げられたらそれまでだ。
以前はマグロ漁船に乗せることが本当にあったらしいが、今はマグロが捕れず、たいした金にはならないのだそうだ。
※Ernst Ludwig Kirchner「Female Nude Seated」
返済されたら商売にならない
私はヘルスで聞いたトイチ業者の話をした。
「それだと、返済されてしまうじゃないですか。それよりも元金を返せない仕事の方がいいんです」
返済されたら商売にならないのである。そこで、元金を返せない程度の地味な仕事を紹介する。
「会社員をやっている人なら、夜は居酒屋とかでバイトさせるんですよ。それで利息だけ払わせるんです」
10万円を貸し、10日ごとに利息分の4万円だけ返済させる。元金はそのままにして、1ヶ月で利息は12万円になり、これでも元金分プラス2万円が返ってきているのだから、金融業者は十分元をとっている。
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