松沢呉一のビバノン・ライフ

猫町倶楽部で話したことの補足—メキシコのホモフォビアと日本のホモフォビア[1]-(松沢呉一)

メキシコのセックスワーカーが直面している危機は何億もの人が直面している危機—ポストコロナのプロテスト[28]」「トランスジェンダーのセックスワーカーが次々と殺害される—ポストコロナのプロテスト[30]」「メキシコの法規制が警察の暴力を加速させている—ポストコロナのプロテスト[31]」あたりから続いていると言えば続いています。

 

 

 

再度『マゾヒストたち』の読書会があります

 

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11月21日、猫町倶楽部のオンライン読書会「性風俗産業から差別問題を考える読書会」は無事終了しまして、これに続いて12月21日にクリスマスフェスのひとつとして、オンライン版『マゾヒストたち』の読書会があります。今回、私はゲストではないのですが、あの本をネタに自身の性や性の考えを語り、他人の性や性の考えを聞くことに意義がありますので、こぞってご参加ください。

 

 

 

 

リアル版マゾヒストたちの読書会は、その感想を「ビバノン」で大量に書いたし、答えがいのある質問も多数受けて、私自身が大いに刺激を受け、「ああ、そこは本では説明していなかったな」と気づかされたりもしました。慣れてしまっているジャンルについては背景と化してスルーしがちなことってあるんです。

あの本は読んだ人に、なにかしら気づきを与えるのだろうと思われて、懇親会でも延々と話が続いていました。「今まで意識したことがなかったけど、自分もこのプレイはやってみるとハマるかもしれない」「こんなところまでは至らないけど、この心理は私と同じ」といったように、自身の性との重なりを見出すこともありましょうし、自分とは重ならないがために、人間の性のとめどもない広さを実感することもありましょう。

自分の性が他人と同じと気づくことも、自分の性が他人と違うと気づくことも、どちらも収穫であり、そういう本であるとの自負はあったにせよ、その様子を体感できたのは初めてです。読書会という場があってこそですし、あの時の盛り上がりがあったために、再度、マゾヒストたち』が選択されたのだろうと思えて私も嬉しい。

それに対して今回の「性風俗産業から差別問題を考える読書会」では、参加者が自身の性と向き合うことにはなりにくく(ならないわけでもないのだけれど)、どうしても一方的にこちらが語ることになってしまいました。参加者からも「情報量が多すぎて消化しきれない」といった意見が出てました(トーク・パートでなく、闇の女たちの読書会での感想だったと思います)。

「そこは考えてなかった」という指摘もあったのですが、盛り上がるというほどではなし。

これはリアルとオンラインの違いもありそうです。個人差もあるかもしれないですが、私は生身で面と向って話した方が話しやすい。

私があの日話した内容はほとんど書いてきたことの蒸し返しで、「ビバノン」にたいてい書いてあって、要友紀子とも共有している内容を語っただけです。

その中で、書いたことのなかったほとんど唯一の内容はメキシコのホモフォビアの話です。これはトーク・パートではなく、読書会の方で話したんじゃないかな。文化圏によってもホモフォビアの内容は少し違って、このことを理解すると、ラテンアメリカでトランスジェンダーの街娼が多数殺されていることの意味が理解できます。

11月20日はトランスジェンダー追悼の日(Transgender Day of Remembrance)でした。それに因んだわけではないですが、この話は日本のホモフォビア、さらには差別自体や、差別の解消を考える上でも参考になるので、「ビバノン」で改めてまとめておくことにしました。

 

 

メキシコのLGBT運動の歴史は古い

 

vivanon_sentence「ポストコロナのプロテスト」のメキシコ編を書いている時にもWikipedia読書を続けていたのですが、英語版の「LGBT rights in Mexico」「LGBT in Mexico」は読みがいがあります(当然、スペイン語版もあるのですが、項目建ても内容もちょっと違う)。

メキシコの法規制が警察の暴力を加速させている—ポストコロナのプロテスト[31]」に軽く書いたように、メキシコのゲイリベレーションは左翼運動として始まっており(これ自体は珍しくはなく、むしろ標準かもしれない)、今もその流れが強いようです。これもメキシコに限らずのことですが、反政府運動でしばしばレインボーフラッグが出ています。

メキシコでは、プライドパレードのスタートも早く、1979年に第1回目が開かれており、現在も続いています。

 

 

 

 

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