パンクはインドネシア社会の保守化に勝てるか—ポストコロナのプロテスト[47]-(松沢呉一)
「メタリカやナパーム・デスが好きなジョコ・ウィドド大統領—ポストコロナのプロテスト[46]」の続きです。
ジョコウィ元パンクス疑惑
ジョコ・ウィドド大統領がメタルファンであることはよく知られているのですが、若い頃はメタルじゃなくて、パンクが好きだったことを明らかにする写真が一昨年話題になったことがあります。
髪の毛を立ててセックスピストルズのTシャツを着ています。
しかし、これはフェイクでした。ジョコウィ自身がこれを否定するコメントと写真をinstagramで公開しています。
若い頃は野山で冒険していた、つまりパンクスではなかったのだと。
この写真は中学生くらいじゃないかと思うので、もっとあとでパンクに走った可能性はなお否定できないですが、他に何も証拠や証言が出てきていないので、フェイクなのでしょう。
わざわざ否定したのは事実違うからでしょうけど、元パンクスだとちょっと都合が悪いってことなんだろうと思います。
インド社会で受け入れられるのはメタルまでです。デスメタルもスラッシュもいいらしいのですが、パンクはなお微妙なところがあるようです。私の中でのナパームデスはパンク文脈のバンドですが、一般にはメタルです。
パンク弾圧
とくにアチェではパンクスはシャリーア警察に捕まります。
2011年、アチェで65人のパンクスが津波による孤児支援のライブのあと(このライブはパンクのライブではなく、メタルのライブにパンクスも集まっただけのようです)、シャリーア警察に逮捕され、髪の毛を刈られ、服を焼かれ、再教育施設に入れられました。
2011年10月14日付「BBC」
以下に写真が多数出ています。
ひでえなあ。
パンク弾圧はこれが二度目らしい。
上のBBCの記事ではAceh’s policeとなってますが、これはシャリーア警察のことです。「刑事罰ではなく、子どもを保護して再教育をしただけだ」と言ってます。なにを勝手なことを。子どもと言っても成人が多数含まれているはずです。
これはナチスにおける親衛隊の役割です。法で処罰ができない人たちを手続きなく収容所に入れて殺したのが親衛隊。ウイグルでは堂々と警察がやっているのでしょうけど、再教育施設という位置づけは同じ。
これに対してトルコのパンクスもインドネシア大使館に抗議行動。
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