目先を変えると簡単に人は騙される—YouTuberたちのぼったくり潜入企画に思うこと[3]-(松沢呉一)
「風営法とぼったくり—YouTuberたちのぼったくり潜入企画に思うこと[2]」の続きです。
客引きに声をかけられやすい人・かけられにくい人
誤解している人もいるかもしれないですが、客引きのすべてがぼったくりというわけではなくて、「だいたいの客引きはぼったくり」と言えるのは新宿・歌舞伎町くらいじゃないでしょうか。安全な客引きばかりの街もありますので、この辺は事前調査をしておいた方がよろしいでしょう。
実のところ、どちらの客引きでも、私はあまり声をかけられません。風俗ライター時代は私の書いているのを読んでいる客引きがいて、「読んでますよ」と声をかけてくるのがいましたし、地方都市に行くと、こっちから声をかけて情報をもらってましたが、あっちからは声をなかなかかけてこない。
客引きが声をかけるのはまずは酔っぱらい。もっともぼったくりやすい客です。あとで警察に行ったところで場所さえ覚えてないですから、警察も相手にしない。そうじゃなくても相手にしませんが。
続いてゆっくり歩いている人やキョロキョロしながら歩いている人です。暇であったり、その街に詳しくないってことを全身で表現しています。
声をかけないのはこの逆。しっかと前を見て早足で歩いている人は目的がもう決まっている人ですから、声をかけても無駄です。
私は酒を飲まないので、もっとも狙われるタイプからは外れています。歩き慣れた場所でも看板や人をよく観察しているので、キョロキョロはしているのだと思うのですが、歩くのが早い。
もうひとつ声をかけられない理由があって、見た目や目つきが警察っぽいらしいのです。私は常日頃、街の安寧が保たれているのかパトロールしてますから。『闇の女たち』にも出てくるように、街娼のおねえさん方にもよく「刑事かと思った」と言われました。
あるいは休日の親分とも言われています。いつもじゃないですが、歌舞伎町をジャージにサンダルで歩いているからだと思います。手にしているのはレジ袋。
警察や親分だと思われていなくても、その格好だと万札は持っていないだろうと見抜かれるってこともありそうです。ぼったくりが相手にする価値のない存在です。私は大金を持ち歩かないですし、キャッシュカードも持ち歩かない。持ち歩くと落とすのです。携帯電話も必要な時しか持ち歩いてない。怖いものなし。
判断力の9割を奪うぼったくりの手法
ぼったくりが怖い人は、これを真似すれば大丈夫です。遊ぶ時は前日からその気で準備をしておく。どこに行くのかも決めておく。YouTubeを見て、ぼったくりの手口を学んでおく。
しかし、知らない街だと、事前に決めることは難しくて、フラフラと街をほっつき歩くことになり、それがまた楽しいですからね。
その場合でも、用心深い人だと、万札を1枚か2枚しか持って行かず、キャッシュカードや身分証明書、携帯電話も持っていかない。人質(モノ質)として「なんか置いてけ」となりますから、置いていっていい服を着て、置いていっていい時計しかしていかない。
そもそも声をかけられず、ぼったくりの店に入っても、大きくはやられないですが、私もだいたいの場合はそうしていました。地方取材の場合は急な連絡が入ってくるので、携帯電話くらいは持ち歩いてましたが。
しかし、いくら注意していても、新しい手口が出てくるので、警戒心が働かずにやられる人はいるでしょうね。
カーッ、これはやられますな。マッチングアプリでやりとりしている段階で、恋心なり、エロ心なりが芽生えてますし、こっちは信頼関係ができていると勝手な錯覚を抱いていますから、なかなか疑えない。しかも、美形となれば判断力の5割をもっていかれます。エロいとさらに4割を持っていかれて、通常の判断力の1割しか残ってません。
このやりとりを聞いても、彼女はうまいわ。
うまいがゆえに疑う人もいましょうが、判断力が1割しかないので、たいていの人は彼女の手前、カッコつけて払ってしまいそう。
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