松沢呉一のビバノン・ライフ

ぼったくりをやるのも所詮人間—YouTuberたちのぼったくり潜入企画に思うこと[4](最終回)-(松沢呉一)

目先を変えると簡単に人は騙される—YouTuberたちのぼったくり潜入企画に思うこと[3]」の続きです。

 

 

もっとも感心したぼったくり動画

 

vivanon_sentenceすごい本数なので、全部観たわけではないですが、私がもっとも「いいな」と思ったのは、これ。

 

 

 

 

キックボクサーの皇治さんです。

しょっぱなから、店名を知っていて探している客というだけでキャッチから怪しまれています。よっぽど金が余っているのか、なぜかぼったくられてもまた自分から来る客が稀にはいるらしいのですが、通常、「あの店はいいぞ」と口コミが広がることはないので、潜入する場合は、店名をキャッチに聞かない方が怪しまれないと思います。

 

これの何がよかったかと言うと、続編です。

 

 

 

 

私がこれを気に入ったのは、皇治さんが人として接しているからです。対等ではないですが、同じ場に立っている。これが一番相手には効きます。広く性風俗だったり、客引きだったりにも共通するところなのですが、彼らははぐれもん意識があるため、外から攻撃されるのは慣れていて、時には「やってやろうじゃねえか」と戦闘態勢に入ります。

それより、同じ地面に立っている人から説教される方が沁みる。だからと言って、すぐに辞めるとは思えないですが、辞めようと考えるとしたら、これですよ。これぞ正しい成敗です。

このスタンスは自身にアウトロー意識があるからこそできることですし、格闘家だからかもしれない。試合が終わったら敵も味方もなし、みたいな。

 

 

ぼったくりで殺されることはない

 

vivanon_sentenceぼったくりの店はヤクザがやっていると思っている人も多いでしょうが、実際に現場で働いているのはまず組員ではありません。ヤクザはこんな面倒なことはしない。金を持って行くだけ。

東京ではまず聞かないですが、地方都市だと、組員やその妻が直接飲み屋や性風俗店を経営していることがあります。ぼったくり店をやっていることもあるかもしれないですが、もし組員だとしたら、いよいよ殺されるようなことはない。

1980年代だったと思いますが、歌舞伎町で部屋に閉じ込められた客がビルの窓から逃げようとして転落して亡くなったことがあります。私の知る限り、ぼったくりの客が亡くなったのはこれだけではなかろうか。殺されたようなもんではあっても、事故死です。

彼らが欲しいのは金であって、数万、数十万の金のために人を殺すのはわりに合わない。ムショに入るのも割に合わないので、捕まるようなこともしない。厳密には捕まるようなことをしていますが、逃げ道のある範囲でしかやらない。

ぼったくりの店によっては、安い内装で、いかにも怪しいという店もありますが、この店はしっかりしてそうです。

このご時世、閉店している店がいっぱいありますから、居抜きで借りて、新たな内装費はかけてないだけのかもしれないですが、「まともな商売」をやっていた店がやっていけなくなってぼったくりに転ずるケースもありますから、その気になれば、いつでも「まともな商売」に戻れます。でも、戻れないのです。

金が回らなくなって四苦八苦している店に客引きの方から声がかかって、「客を連れてくるので、5割乗っけて、その分、バックしてくれ」と提案されて、背に腹は変えられず、いわばプチぼったに踏み込んで、やがては「人数が少なくても、乗っける額を増やせばいい」ということになっていって、立派なぼったくり店になっていきます。

10万ぼったくれれば、1日客が1人でもやっていけます。

この場合、「まともな商売」をやっていてもダメだったからこうなったのであって、少しはいたかもしれない常連さんも寄り付かなくなって、いかにロケーションがよくて内装がまともでも、いまさら戻れない。

※歌舞伎町にて、若い男2名がどこかへ連れていかれるところ。歩きながら横で聞いていたのですが、かわいい子がいっぱいいる店らしいですよ。でも、これはぼったくりではなく、普通のキャバクラっぽい。案内所からの紹介じゃなかろうか。

 

 

next_vivanon

(残り 1640文字/全文: 3447文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ