松沢呉一のビバノン・ライフ

結婚してから風俗の世界に飛び込む事情—夫の知らない妻たちの顔[上]-[ビバノン循環湯 570] (松沢呉一)

20年ほど前にインターネットに書いたもの

 

 

結婚して四年、同居したのは二ヶ月

 

vivanon_sentenceバツイチ専門のホテルヘルスを取材したときのこと。相手をしてくれた人は、バツイチじゃなくて、現役の人妻であった。人妻店に行ってバツイチだと、「なんだよ」と思うものだが、バツイチの店で現役の人妻が出てくると、やっぱり「なんだよ」と思ってしまうものだ。

しかし、彼女の夫は銀行員で、ずっと海外赴任しているため、バツイチみたいなもんと言えなくもない。夫はもう六年間も海外に行ったままだが、結婚してからまだ四年。計算が合わないようだが、たまたま夫が帰国した時に友人の紹介で知り合って結婚したのである。

よく聞く話だ。赴任先で知り合った相手と恋に落ちて結婚するケースもないわけではないが、圧倒的多数の日本人駐在員は、いずれ日本に戻る気で、その地で骨を埋める気はない。となると、国内で知り合った相手との国際結婚よりも不安が伴う。相手が日本の生活に馴染めるのかどうか、周りはどう思うか。

そのため、いずれ海外赴任になるとわかっている人は、慌てて結婚をするのも多いが、それができなければ、日本に戻った短期間のうちに結婚相手を探すため、互いに相手のことがよくわからないまま結婚するのも多いと聞く。

彼女の夫もそのクチ。その時点では間もなく国内勤務になる予定だったため、また、彼女は海外に行きたくなかったこともあって、夫は単身海外赴任を続け、彼女は日本で待っていることとなったのだが、夫の海外赴任が長引き、いつ国内勤務になるのかもわからない状態になってしまった。

夫は年に二回から三回帰国するが、日本にいるのは長くても一週間程度なので、全部合わせても、同居したのは二ヶ月くらいしかない。バツイチのようなものでありながら、結婚から四年経っても新婚みたいなものでもある。

「倦怠期が来てないので、今でも会うとすごいですよ。温泉に行って、三日三晩、部屋に籠もってセックスしたこともあります」

彼女自身、かなりお好きなようで、いくら集中してセックスしたところで、「セックス溜め」ができるはずもなく、浮気の経験もある。

※Paul Gauguin「Seated Nude Seen from Abov

 

 

バレたところで怖くはない

 

vivanon_sentence風俗で働き始めた理由は、銀行員だけあって、夫が金に細かいため。

「いい給料をもらっていて、海外勤務の手当だって出ているのに、私には自由に使わせないんですよ。何に使ったのかを細かく報告させるんです。海外にいても、そんなことを細々報告させるんですよー。夫の許可なく思い切りお金を使いたいんです」

それとともに性的な欲望を果たす目的もあって、この日も思い切り乱れていた。

 

 

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