オロモの歌手殺害を契機に数百名が死亡—ポストコロナのプロテスト[49]-(松沢呉一)
「エチオピアのハチャル・フンデッサ射殺事件—ポストコロナのプロテスト[48]」の続きです。
葬儀をどこでやるかで揉めて死者が出た
ハチャル・フンデッサが殺害されたのを契機にエチオピアは大混乱に陥ります。
7月1日の葬儀の様子が出ていますが、遺族は地元でやろうとしたのに対して政府はアディスアベバでやろうとしたらしく、この対立で2名が死亡。
アディスアベバはオロミア州にあります。オロミアはオロモの支配地域ですが、アディスアベバは中央政府の管理下にあるので、アムハラとオロモの対立です。首相はオロモですけど、中央政府はアムハラが強い。葬儀なんてどっちだっていいと思うのですが、そういうわけにはいかんらしい。
結局生まれ故郷で実施。
オロモとアムハラの対立はこのくらい強い。
以下は2015年のものです。
オロモ管理地域の一部を中央政府の支配下にあるアディスアベバに移することに反対するプロテストが数週間続き、少なくとも75名が射殺された時の様子です。埼玉県川口市の一部を東京の北区にするだけで、大反対運動が起きて、警察に75名が射殺されたようなものです。エチオピアでは行政区分が国境と等しい重みをもっています。
国外でもオロモとアムハラは別々に集会
一歌手が亡くなっただけで、そうも騒がなくてよさそうですが、この複雑な民族対立が事態を大きくしていきます。
以下はワシントンD.Cでのオロモ。
振られているのはオロモ解放戦線の旗とティグレ(ティグレイ)の旗。時々星条旗。ティグレの旗は公式の行政地域の旗ですが、オロモ解放戦線はゲリラ組織です。なぜ別民族のティグレの人たちがオモロと一緒にやっているのかは後述。
以下もワシントンD.C。
こちらはエチオピア国旗ばかり。アムハラがメインだからです。
バラバラでやってくれているからいいようなもので、一緒にやったら殴り合いになるかもしれない。エチオピアでもそんな感じですが、アムハラがオロモを憎悪しているというより、オロモがアムハラを憎悪している印象です。彼らは自身が迫害されているとの意識がありますので。殴りかかるのはたぶんオロモ。
全土で数百名が殺された模様
以下は謎のランニング。
彼らはどこに向っているのか。なぜ棒を手にしているのか。このような光景はナイジェリアでも見られました。
(残り 2376文字/全文: 3689文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ