松沢呉一のビバノン・ライフ

ハチャル・フンデッサを殺害したのはオロモ解放軍内アバー・トビー?—ポストコロナのプロテスト[52]-(松沢呉一)

エチオピアは今も戦争気分—ポストコロナのプロテスト[51]」の続きです。

 

 

今週は誰の番ですか

 

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前々回登場したEndalkachew Chalaは、殺人に関与した組織としてアバー・トビー(AbbaaTorbee)の名前を出しています(「アバー・トビー」か「アバ・トビ」かわからんのですが、「アバー・トビー」としておきます)。アバー・トビーはオロモ解放軍の中の殺人部隊。アバー・トビーという言葉は「今週は誰の番ですか」という意味のアファン・オロモ語(Afaan Oromoo)だそうです(アファン・オロモはオロモ語の中の分類ではなく、オロモ語の別称)。殺す気満々。

Endalkachew ChalaFacebookのアバー・トビーのアカウントをチェックして、そこからいくつかの根拠を出しています。私もチェックしてみましたが、驚きました。

ゲリラってくらいで、その正体をわからなくしているのかと思ったら、顔を堂々晒していて、マスク率ゼロ。女の兵士もけっこういます。

さらに驚いたのは殺害現場の写真を多数出していることです。

Facebookではパンチラ写真がBANされるのに、どうしてこれが公開されているのかわからない。頭が割れていたり、内臓が飛び出ていたりはしないので、「寝ているだけ」と言えばそれまでかもしれないですが、それにしてもガイドラインに反していないパンチラはBANされるのに。アバー・トビーをBANすると担当者が殺されるからか?

殺されているのはおおむね政府軍兵士だと思われて、ここは配慮があるのでしょう。彼らは民間人の殺害や誘拐については否定しているので、その証拠になるようなものは出さない。

アバー・トビーはハチャル・フンデッサ殺害の前日にアディスアベバの浄化を開始する」と宣言。

Googleの自動翻訳では翻訳できないオロモ語ですが、Facebookでは翻訳されます。どの言語でも、SNSでは、流行語、隠語、ネット語の類いが多い上に、省略も多いために、正確な意味を受け取ることは難しかったりしますけど、Google翻訳が扱っていないマイナー言語はFacebookで翻訳すればいいことを発見。試してないですが、非公開状態で翻訳できるのではなかろうか。

また、日付は変わっていますが、ハチャル・フンデッサ殺害から数時間後に以下の写真が投稿されています。

 

 

 

 

決定的な写真です。

病院で撮った写真でしょう。この写真を撮れるのは、病院関係者か、家族か、警察くらい。メディアも急行してましょうが、こんな写真が撮れるかどうか。

病院か警察内部に協力者がいるのではなかろうか。

この殺害はアムハラ社会の混乱を狙ったものでもありますから、アバー・トビーは犯行声明を出さず、殺害はアムハラであることを匂わせています。

 

 

オロモ解放戦線とティグレ人民解放戦線

 

vivanon_sentenceこの頃にはネットでは憶測が飛び交って、すでに暴徒化した群集が人を殺し始めていて、アバー・トビーの予告した「アディスアベバの浄化」は、ハチャル・フンデッサ個人の殺害のみならず、アムハラの浄化、異教徒の浄化までを含め、さらには政権の浄化までを含めていたようにも思えます。

この状態を望んだのはオロモ解放戦線だけではありません。ティグレ人民解放戦線も同様。

 

 

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