松沢呉一のビバノン・ライフ

ワクチンのリスクを許容するならウイルスのリスクも許容すればよかったのでは?—コロナ気分からワクチン気分へ[2]- (松沢呉一)

コロナバブルは終了しました—コロナ気分からワクチン気分へ[1]」の続きです。

 

 

 

副作用が出てもワクチンのメリットは大きい

 

vivanon_sentence専門家が警鐘しているように、短期では安全とされているワクチンでも、長期の影響はまだわかりません。

しかし、死者が出るとしたって10万人に1人といった単位です。比較的安全とされるファイザー+ビンテックのワクチンやモデルナのワクチンであればおそらくそんなもん。

ワクチンに限らず、経口避妊薬のピルでも副作用による死者が出ますが、やはりそういう単位です。

ただし、ピルの場合は副作用のデータが蓄積されているので、どういう人に副作用が出るかもわかっていて、事前にそのリスクがあるかどうかを検査することも可能であり、そういう人たちはピルを使用しないように病院で指導され、それを守る限り、副作用の問題はほとんどないことはこれまでにも書いてきた通りです(具体的な数字を検討した回もあったのですが、手直しするためにシリーズごと未公開にして、そのままになってしまいました。検索すれば数字を知ることは容易ですので、気になる人は探してください)。

新型コロナのワクチンに副作用があるとしても、副作用が出る人の傾向がはっきりすれば対応ができるわけですが、それがわかるには時間がかかります。だから、通常、新薬は認可までに数年かけますが、新型コロナの場合は、今の状態を続けることのデメリットがあまりに大きく、ウイルスで死ぬ人以上が別の病気や自殺、餓死等で死にますから、少々の副作用には目をつぶるというのが今の流れです。

私もそう考えています。メリットとデメリットを天秤にかけて、メリットの方が大きければ少しくらい死んでもしょうがない。ワクチン接種が遅れて、集団免疫が達成するまでの時間が長ければ長いほど、感染は増える。それを防ごうとして行動を規制すると経済が停滞し、失業率が上がり、自殺や餓死が増えるんですから、どちらの弊害を選択するかです。

※2020年12月9日付「東京新聞」 ファイザー+ビンテックのワクチンは氷点下70度で保存する必要があるため、「その設備をどう確保するのか」が主たる内容の記事ですが、どちらにせよ、日本ではこの1ヶ月、2ヶ月で接種が始まるってことはなさそう。

 

 

リスクを理解した上で希望する人たちにはどんどん接種すべし

 

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私は老人や病人でも、ウイルスに感染してもいいと覚悟している人たちは放置すればいいし、感染したくない人にはそれ相応の対策がとれるようにすべきという考え方ですから、長期の副作用があり得ることを前提にワクチンを接種する人は接種すればいい。その代わり、接種しない選択も保証される限りにおいてワクチン接種に賛成です。希望者にはバンバン接種すべし。

マスクも「する/しない」は個人の決定に任せればいい。ワクチンも「接種する/しない」は個人に任せればいいってことですが、アンチマスク派の中にはマスクをする人を攻撃するタイプがいて、私はそれには賛成しない。同じく「ワクチンはそのリスクに同意した人たちが接種すればいい」のであって、アンチ・ワクチン派が選択権を求めるのではなく、ワクチンそのものに反対しているのは意味がわからない。

日本の厚労省は医薬品に対して慎重であって、これは過去のさまざまな薬害に対する反省に基づいていることですから、褒められてもいいのですが、今回は遅れれば遅れるほど、感染が拡大します。それでも他国での接種による副作用が出るのか出ないのかを見定める選択もありなのかとは思いますが、ゼロリスクにはできないので、適当なところで発車オーライでいいのではなかろうか。

しかし、副作用が若い世代に出る可能性があるんだったら、若い世代への接種は後回しですべきです。新型コロナでは死なないのに、ワクチンで死ぬのはあまりに理不尽。

国によっては、感染を拡大する可能性が高い軍人、警官、教員に対しては接種を義務化する動きがあり、さらには学生も含める動きもあって、これに対する反対運動が起きています。希望者だけならいいとして必須はなしだと思うなあ。ワクチンを接種しない人がいたって、多数が接種すれば集団免疫が機能するんですから。

※2020年12月10日付「BBC」 中国シノヴァク製ワクチンを評価している珍しい国UAEによると、有効率は86パーセント。多数の人がワクチンを接種すればこの程度の有効率でも問題なし。

 

 

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