松沢呉一のビバノン・ライフ

マスクをしていないからって陰謀論者だと決めつけるのはやめれ—ポストコロナのプロテスト[80]-(松沢呉一)

ベラルーシのスリッパ革命と反ゴキブリ・プロテスト—ポストコロナのプロテスト[79]」の続きです。

 

 

セルビアのアンチ・ロックダウン・プロテスト

 

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「民主主義は後退していない」と主張するニューズウィークの記事を検討する」で、「プロテストが起きているから、民主主義は強化されている」なんて見方はあまりに皮相で楽観的すぎ、現実を見ていない論であることは十分にご理解いただけたと思います。そう言えるケースもある。しかし、そうとは言えないケースもあります。

あの記事のマヌケさは、「アンチ・ロックダウン・プロテストは陰謀論者によるもの」という思い込みにもよく出ています。ヨーロッパがそうであるかのように思い込んでいるようですが、むしろこれは米国の「トランプ派≒Qアノン派」の特徴です。プランデミック派(≒アンチ・ウイルス、≒アンチ・マスク)は各国にいますけど、それだけで見るのは大間違い。

このことは今までも繰り返してきた通り。ロックダウンに反対しているのは生活がかかっている人々、とくに飲食関係者によるものもあり、エリアを限定するするロックダウンについては住民たちが立ち上がってます。反政府運動潰しのロックダウンについては反政府派が反対するのは当然です。

私のように「そうするしかない状況もあり得るにせよ、他の方法をとれるっぺ」と考える消極的アンチ・ロックダウン派、アンチ規制派もいます。

これらの中にも一定数の陰謀論者はいましょうけど、そこをとらえて、全体を陰謀論の一言で批判した気になるのは、陰謀論と同様に危うい。内容を検討することなく、気に食わないものを陰謀論で片づける人々の間違いについては早い段階から指摘していた通りです。

そのことのわかりやすい例を出しておきます。セルビアです。日本では7月の衝突時に軽く取り上げられているだけで、詳細はあまり知られていないでしょう。陰謀論で片づけられないことを理解するにはわかりやすい例ですが、内容はわかりにくい。

※2020年7月8日付「時事通信」 ざっくりとしたことはわかりますが、プロテスターたちがどういう人たちなのかまではわからん。時事通信は続報も出していますが、一切取り上げなかったメディアも多くて、セルビアって言われても、たいていの人はどこにあるかも知らんですわね。そんな国で何がどうしようと知ったことではないでしょう。ぶっちゃけ私もそうですけど、次回書いているように、私はバルカンに少しだけ馴染みがあります。

 

 

続々ウイルスに倒れる聖職者たち

 

vivanon_sentenceプランデミック派の陰謀論者たちはマスク率が低いのは事実として、そもそもマスクをしていないから陰謀論者と決めつけるのもどうかと思います。ほとんどのプロテストは屋外なんですから、むしろ正しく判断をしている場合もありそうです。

そのことの間違いも、セルビアはわかりやすく見せてくれているので、そこから始めます。

マスクしていないことが陰謀論者の証拠だったら、以下は陰謀論者の集会か?

 

 

 

 

これはセルビア正教会の総主教であったイリネイ(Иринеј)の葬儀です。昨年11月20日に亡くなったのですが、死因は新型コロナです。

屋内にもかかわらず、聖職者たちはほとんどマスクをしてません。完全な陰謀論者です。この映像ではわからないですが、外ではマスクをしている参列者でも最終的には中で外します。聖職者の遺体の手や頬にキスをするのが習わしらしい。逆、逆。外はノーマスク、中はマスク着用でしょうに。

屋内に人が密集していますので、この場面では私だってマスクをしますし、遺体に触れるんだったら、ラテックスの使い捨て手袋をさせてもらいます。皮膚にウイルスが付着している可能性が高い上に、参列者の中に感染者がいたら、あっという間に広がりかねない。つうか、現に広がってます。葬儀とあらば、咳が出ているくらいで休むわけにはいきません。

こうして正教会の指導者たちが次々と新型コロナで亡くなっています。イリネイは10月30日に新型コロナで亡くなったモンテネグロのアンフィロヒエ・ラドヴィッチ(Амфилохије Радовић)司教の葬儀で感染した模様です。

 

 

 

 

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