松沢呉一のビバノン・ライフ

米議事堂乱入が民主主義のはずがあるか—「民主主義は後退していない」と主張するニューズウィークの記事を検討する[2]-(松沢呉一)

日本版の翻訳ミスとオリジナルの発想ミス—「民主主義は後退していない」と主張するニューズウィークの記事を検討する[1]」の続きです。

 

 

プロテストが起きた原因が反民主的という視点が欠落

 

vivanon_sentenceニューズウィーク日本版の「コロナで民主主義が後退する」という予想が当たらなかった3つの理由と題された記事の、続いての問題点は、プロテストの評価があまりに一面的ってことです。

以下は日本語版からの引用。

 

 

人種差別や警察の暴力に対する抗議も世界規模で広がっている。アメリカのBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動のデモには、7月上旬の時点で最大1500万~2600万人が参加。いくつかの事件と民衆の怒りが抗議活動に火を付けたことは確かだが、新型コロナとロックダウンが招いた数々のストレスがなければ、これほど劇的、持続的に反発が燃え上がることはなかったのではないか。

 

 

国民のストレスがプロテストに向かう衝動になったことは事実でしょうけど、ロックダウン自体が反民主主義的だと認識している私にとっては(反民主的であってもやらざるを得ない局面があることは認めつつ)、「反民主的な施策によってプロテストが起きたから民主主義は強化された」という論は「警察の暴力がプロテストを生じさせた。警察の暴力は民主主義を強化した」と言っているようなもので、反民主的な前提を含めて評価しないと意味をなさない。

「ロックダウンは民主主義か、反民主主義か」という点は議論がありそうなのですっ飛ばすとして、これ以外の文章を合わせても、プロテストが起きていることはどんな局面の、どんな質のものでも民主主義を強化したという論を展開しているとしか思えない。

私自身、それがナショナリストのものであれ、プランデミック派のものであれ、プロテストはそれ自体、民主主義的な行為だと認識しているのはすでに書いた通りであり、規制されるべきではないですが、その内容が民主主義的か否かはまた別問題であるし、民主主義を暴力的に潰すようなことはもはやプロテストではなく、クーデターであり、反民主主義です。

※ACLED(Armed Conflict Location&Event Data Project)による12月6日から12日までの1週間で米国で起きているプロテストや衝突を記録したマップ。ACLEDはサセックス大学から始まったプロジェクトで(現在は独立)、世界の争乱やブロテスト、暗殺などの情報を収集してデータベース化している。ここのデータでも明らかなように、米国では一方的にBLMを契機にした民主派のプロテストのみが活発になっているのではなくて、パンデミックのストレスは、右派、民兵組織、KKKなどの差別団体をも活発化させて、両者の衝突を招いており、警察によるものではなく、それら市民の対立によってBLMがらみだけで二桁の人が殺されています。これが民主主義の強化と言えるか?

 

 

議事堂突入は讃えるべきプロテストか?

 

vivanon_sentence今回米国で起きた議事堂突入もプロテストからの逸脱です。トランプ派の子どもじみた不正選挙妄想であれ、議事堂の外で騒ぐところまではプロテスト。しかし、暴力的に審議を中断するのは逸脱。

動画を観ていたら、トランプ派の暴徒はメディアを襲って、テレビカメラを破壊していました。これもアウト。XR、北欧のムスリム、パンデミック派、メキシコの覆面部隊などと通じますし、報道を封じる権威主義国家とも通じます。

議事堂突入さえもプロテストとして容認されるべき状況はありえるとしても、米国においてはそんな状況にあるとは思えない。

これまでにもメキシコの覆面フェミニストたちの暴徒化と人権委員会の占拠東ヨーロッパのフーリガンによるプロテストチリの教会への放火などを批判してきたことと同じであって、トランプ派だから批判しているのではありません。

 

 

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