感染者数に照らしてもベラルーシのプロテストはコロナ対策への不満とはほぼ無関係—ポストコロナのプロテスト[78]-(松沢呉一)
「ベラルーシのプロテスターたちのマスク率を確認する—ポストコロナのプロテスト[77]」の続きです。
最初の死亡者
ベラルーシ大統領選の投票日は8月9日。翌日、ルカシェンコの勝利が発表され、数字はテレビの出口調査と同じ。
ここから猛烈にプロテストが拡大。
この日、プロテスターのアレキサンドル・タライコフスキー(Аляксандр Тарайкоўскі)がミンスクで死亡。
どうやら実弾が胸に当たったっぽい。「どうやら」というのは、警察がデタラメで、「手に爆発物を持っていて、機動隊に投げる前に爆発して死亡した」という発表をしていて、ロクに調べてもいないのです。何も手に持っていないのは明らかですし、警察側から発砲しているのも明らかです。映像を撮られていることをわかっていないのか、わかっていても無視か。
この翌日も実弾を使用していることが確認されています。
ミンスクの一部では火炎瓶も飛んだようですが、他の動画で確認しても、この日、ほとんどのプロテスターたちはコールと手拍子をする程度です。そこに突然警察あるいは軍がやってきて、つかみかかります。当然抵抗し、これで公務執行妨害等で逮捕する。これはベラルーシの常套手段。これでもベラルーシでは合法なのでしょう。
上の映像にも見られるように、それ以降は投石もなされていますが、そりゃ怒りますよ。
翌12日にはベラルーシ第二の都市ゴメリ(Гомель)で、護送車に長時間入れられていた心臓病のプロテスターが死亡。
この3日から4日の間だけで6.700人が逮捕されています。
米国と違い、ベラルーシの不正選挙は証拠・証言多数あり
チハノウスカヤは選挙管理委員会に拘束されたあと、リトアニアに脱出し、選挙には不正があったとしてルカシェンコの当選を無効として暫定政府を設立し、リトアニア政府は彼女を暫定的なベラルーシ代表と認めました。
どこの国でも負けた側は不正選挙と騒ぎ立てがちですが、ベラルーシについては不正があったことについて疑問の余地はなさそうです。
不正選挙が行なわれることを予期して、野党は監視人を投票所に置いて投票者にどこに投票したかを聞いて発表された数字と照らし合わせ、全国の投票所のうち少なくとも24パーセントの選挙区で不正が行なわれたと発表。
また、多数の選挙管理委員が不正があったことを実名で証言しています。偽造した数字にサインをすることを強いられた、不正を指摘したが無視された、不正を指摘した委員がその場で解雇された、などなど。
さらに国外の団体が選挙後にどこに投票したのかを聞き取り調査した結果でも、スヴャトラーナ・チハノウスカヤが過半数の票を得ていたとの結果が出ています。
おもだったテレビや新聞は政府寄りですが、不正があったことを認めざるを得ず、「不正をしなかったとしてもルカシェンコが勝利した」と辛うじて言うしかなくなったメディアも出る始末。しかし、これは「不正があった」と指摘するためのメディアのギリギリの抵抗かもしれない。
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