松沢呉一のビバノン・ライフ

ロックダウンの分類とマダガスカルのプロテスト—ポストコロナのプロテスト[85]-(松沢呉一)

アンチ・ロックダウンの分類—ポストコロナのプロテスト[84]」の続きです。

 

 

ロックダウンの分類

 

vivanon_sentence前回見たWORLD POLITICS REVIEW」のアンチ・ロックダウン分類に倣って、ロックダウン他の規制側も分類してみるとしましょう。

 

分類1)純然たる感染拡大防止策

分類2)国民を安心させる手段

分類3)政治的目的の達成

 

ざっとこの3種でしょうか。中国は1番が主たる目的であったとしても、その間に民主化勢力の逮捕をやってますし、香港の弾圧も強めてますから、3番目もありそう。後付けで利用したのだとしても。

ヨーロッパにおいては1と2か。国民の側が政府に「なんとかしろ」と要求するため、なんかせねばならないということになって踏み切った国が多いのではないか。ロックダウンの効果はあるにせよ、その副作用とのバランスや代替手段の検討を十分やらないまま踏み切った感があります。

この延長として、8割なり9割なりがロックダウンに賛成している中、実施した方が票が集まるという計算もあって、こうなると3番目になります。

権威主義国家においては、3番目は「敵対者を潰すことに利用する」という形をとりやすく、民主主義国家においては「票を集めて自身の立場や党の立場を強化する」という形になりやすい。

マスクの義務化は、マスクの効果についてのデータが出揃っていないうちから始まってますから、どちらかと言えば2が強いのだろうと私には思えます。

屋外でのマスク着用義務にはほとんど意味がなく、ソーシャルディスタンスを保てない場合にのみ義務化すればよく、そうすることで集会の権利を侵害することは避けられたわけですが、多くの国が外出時は常にしなければならないとしたのは主として安心感でしょう。

ナッジ効果は屋外でこそ生きそうですが、ナッジ効果を肯定すると何もかもが肯定されてしまって、シラクサ原則が無効化します。あるのかないのかわからないナッジ効果を主張する人こそ、「マスクには効果があるのだ」と思い込んで安心したい人たちかもしれない。

セルビアがそうであったように、マスクの義務化はしばしば公共交通機関内から始まります。今のところ報告されている感染例は船や飛行機など長距離、長時間の利用であって、駅間が短く、多くの人が短時間で出入りする都市部の鉄道で感染したケースは報告されていないのではなかろうか。あるとしても少数。利用者が多いことに比してリスクは低いのです。

それでも近距離で咳をすれば感染する可能性があるので、これはまだいいとして、屋外で一律にマスクを義務化するのは意味がない。

マスクの義務化は私にとっての納豆と同じです。ただの思い込みによる安心感。こういうものがあった方がいいのだけれど、それは強制するようなものではありません。

この分類とプロテストの分類とを見ておくと、その国で何が起きているのか見えやすくなりそうです。

※前に書いたように、下に長い銀行強盗向きの覆面風マスクがカッコいいなと思っていたのですが、どうやらあれはウィンタースポーツ用のようです。下に広がっているので、空気の溜めがあって息苦しくない。そもそも素材がメッシュなので通気性がいい。ウイルス素通りですが、N95や防塵マスクを除けば、鼻っからマスクはその程度のもん。唾液を飛ばさなければいいのです。この商品は1,080円。自分ではマスクをあんまりしないくせにマスクが好きな私の推薦マスクです。ウィンタースポーツの場合は帽子をかぶるのでこれでいいのでしょうが、耳も隠せれば防寒具としてもよさげです。

 

 

マダガスカルのプロテスト

 

vivanon_sentence納豆ついでに、ひとつ例題を出しておきます。

昨年5月にマダガスカルのCovid-Organicsについて書きました。予防薬あるいは治療薬として期待されていたCovid-Organicsですが、あえなくマダガスカルで死者が出てしまって、茨城県で死者が出て納豆信仰が崩れたのと同様のショックを受けたわけです。

それから1ヶ月あとの6月下旬、マダガスカルでは瞬発的なプロテストが起きてます。

 

 

 

 

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