「プーチン宮殿」がロシア国民を激怒させた—ポストコロナのプロテスト[101]-(松沢呉一)
「ナチス占領以来初の深夜外出禁止に踏み切ったオランダ—ポストコロナのプロテスト[100]」の続きです。
プロテストの目玉はロシア
先週末は香港の地域限定ロックダウン、オランダのナチス占領期以来の夜間外出禁止令の他にもコロナに乗じたバカバカしい規制とそのプロテストがあちこちで起きていて、ついていくのが大変だったのですが、先週、ダントツで目が離せなかったのがロシアです。
以下の動画がここまでの経緯をコンパクトにまとめています。
氷点下20度ですってよ。
機動隊に雪を投げている映像が出ていますが、私も雪国育ちなので懐かしいです。ガキの頃は殺傷度を上げるために、仕込みをしてました。ただの雪の玉だとたいして痛くもないですから、表面をツルツルに磨き上げます。中に芯を入れる方法もありました。小石がいいのですが、雪が積もっていると石を拾えないので、氷を中に入れます。大人としては、ガソリンを滲みさせて火をつけるのもいいですね。火炎玉。
この動画でわかりましょうし、日本のメディアでも取り上げているので、ここまでの経緯は簡単に済ませます。
プーチン批判を積極的にやってきたジャーナリストであり、活動家であるアレクセイ・ナワルニー(Алексе́й Анато́льевич Нава́льный/「ナヴァーリヌイ」がロシア語に近いようですが、言いにくいんじゃわ。ナワリヌイという表記もありますが、これも言いにくい。日本語表記が安定するまで、ナワルニーで)は、プーチン一味としか思えない何者かによって毒殺されそうになりながらも助かって、ドイツで回復したあと、今年の1月17日にロシアに帰国し、帰国するや否や逮捕されます。
ここからナワルニー釈放のプロテストが全土に広がって、先週土曜日だけで3千人以上が逮捕されています。
昨年、反プーチンの大規模なプロテストがあって、「ロシアでもこんなことがあるのか」と驚いたのですが、これは特殊例であって、地域限定です。
プーチン政権への不満は根底でつながっているでしょうが、今回は全土であり、内容もどストレートです。警察との衝突も激しく、皆さん、本気で怒っています。ブロテスター側が激しくぶつかっているというより、違法デモということで、警察のやり方がひどいんですけどね。
ソビエト解体以降初であることは間違いなく、ことによると、第二次世界大戦後初、あるいはロシア革命以降、局地的なものを除いて、反政府デモがこれだけの規模で行なわれるのは初なのではないか。当時は起きてもすぐに殺されていたでしょ。
「プーチン宮殿」の衝撃
帰国すると捕まることは織り込み済みで、ナワルニー・チームはプロテストすることを呼びかける動画を発表。
そして、今回、決定的だったのは以下の長編ドラマの公開です。
この2時間近くある動画の多くは「プーチン宮殿」に費やされています。
黒海沿いに、広大な「プーチン宮殿」があり、そこにはプールはもちろんのこと、アイスホッケーができる競技場、劇場、カジノがあり、隣の敷地には教会もあります。もちろん、ロシア正教。
この敷地内には部外者は入れないため、ナワルニー・チームは海にボートを出してドローンを飛ばして空撮していて、これは歴史に残るドローン映像になるかもしれない。
内部の写真も出ていますが、彼らが撮ったものではなく、内部の協力者が提供したものでもなく、インターネットで公開されていたものだそうです。建設、内装に関わった施工業者は記録として写真を撮ります。場所を特定しなければいいだろうというので公開していたようです。
また、場所を特定していないながらも、ここに入ったことを書いている人たちがいて、そこにプーチンがいたことも書かれています。
プーチン宮殿の設計図も出ていますが、これは内部から提供されたもの。そりゃ工事に数千という単位の人が関わってましょうから、どっかから漏れます。維持にも数千という単位の人が投入されているので、ここからも漏れます。
この存在は以前から噂されていて、建設中に内部告発した人もいて(設計図はこの人からだったかな)、数年前からナワルニーも取り上げていたのですが、これまではさほど大きな話題にならず、今回はドローン映像や写真、再現CGでリアルにこの存在を国民に見せつけ、なおかつ殺人未遂と逮捕というお膳立てが揃っていたため、怒りが爆発。
(残り 1577文字/全文: 3549文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ