松沢呉一のビバノン・ライフ

アルゼンチンのフェミニストたちの勝利はポーランドに伝播するか?—ポストコロナのプロテスト[110]-(松沢呉一)

ゴキブリとアヒルがつなぐロシアとベラルーシとセルビアの民主化運動—ポストコロナのプロテスト[109]」の続きです。

 

 

 

ポーランドでまた巨大プロテスト

 

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ミャンマーではまーたクーデターか。で、アウン・サン・スー・チーはまーた拘束か。かつての民主化運動の象徴も、今となっては微妙になってますけど、それはそれとして、これからまた民主化運動のやり直し。民主主義の維持がいかに難しいのかってことです。ウイルスごときで手放してはいけない。

ここしばらくチェックしなければいけない国が多すぎて、すでに取り上げた場所は後回しにするしかなかったのですが、ポーランドのプロテストがまたすごいことになってます。

ポーランドの中絶の実質的全面禁止については「中絶をめぐるポーランドの記録的なプロテストとストライキ—ポストコロナのプロテスト[40]」「中絶全面禁止を図るカトリック=PiSとそれに反対するウィメンズ・ストライキ(Strajk Kobiet)—ポストコロナのプロテスト[41]」を読んでいただくとして、憲法裁判所の判決を受けて、その効力が発したことを1月28日に政府が突然発表。

即日またプロテストが始まりました。

 

 

 

 

政府は集会禁止をここまで延期していて、ロックダウンの政治利用とも思えます。さらに保健省が感染を拡大する可能性があると警告してます。カトリック、その下請けの政府、裁判所、行政が一丸となってのウイルス利用です。

屋外なんだから、禁止するのではなく、「距離をあける」「声を出すならマスクをする」といった注意をした方が効果的だと思うなあ。実際、9割以上の人がマスクをしてますし、集会というより、裁判所やPiS本部を巡るデモですから、ほとんどつねに動いています。その上、扇子で空気を撹拌しています。

政府の妨害にもめげず、即日、10以上の都市でプロテストが始まるのが素晴らしい。ここから連日続いています。

物事の表層だけをなぞる人は、ロシアやポーランドのプロテストを見て、「民主主義は後退していない。むしろ強化されているのだ」というのでしょうけど、ロシアはプーチンが独裁制を強めていることに対する抵抗が辛うじて「プーチン宮殿」を契機にして起きているに過ぎないのだし、ポーランドは宗教道徳が国の法となっていくことに対する抵抗であって、ウイルスを利用した攻撃強化に対する、いわば守りです。いかに規模が大きくとも、まだその動きを食い止めることはできてません。ジワジワと民主主義は後退しているところです。

 

 

ポーランドからアルゼンチンへ

 

vivanon_sentence以下はおそらく1月30日、プロテスト4日目の動画だと思われます。

 

 

 

 

1分30秒あたりからはアルゼンチンです。緑のバンダナはアルゼンチンのシンボルで、これがポーランドに伝播。先の動画ではわからないですが、初日からつけている人たちがいましたので、アルゼンチンの様子を見て準備していたようです。

アルゼンチンはもしかするとコロナ期のプロテストが珍しく成果を出したのかもしれない(実際のところ、どうなのかは以下をお読み下さい)。

 

 

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