松沢呉一のビバノン・ライフ

知人が子どもの命名で悩んでいるのを知って私も悩み出した—男の名前・女の名前[1]-(松沢呉一)

ウガンダとチュニジアのクオータ制」の最後に軽く付け加えようとして書き出したら、止まらなくなってしまったので、独立させました。

 

 

子どもの命名で悩む

 

vivanon_sentence知人に子どもが生まれます。女の子です。その名前で知人は現在悩んでいます。たしかに名前は悩みましょうね。半分楽しくて半分重圧。楽しいのは最初だけかも。

私は彼に「キラキラネームではないけれど、オッと思う名前がいいね」と言いました。この場合のキラキラネームは、ただ珍しいというだけでなく、耳障りのいい読みに無理矢理漢字を当てはめたような名前のことです。

キラキラネームを否定したいのではなく、むしろ私は個人がはっきりするという意味では肯定的であり、たとえば「和博」のように、人名によくある漢字の組み合わせの名前は、「和博だったか博和だったか」「和博だったか和浩だったか」ということによくなるので、だったらキラキラネームの方がいい。

その場合、当て字でもいいのですが、漢字と読みと意味がどこかでつながっていない名前は覚えられない。

結局のところ、私が覚えやすいかどうかの基準でしかないので、無視していただいてけっこう。

彼は最有力候補を教えてくれたのですが、字面も音感も全然キラキラではない。下手すればキラキラの対極で、くすんでいるかもしれない。でも、「オッ」と思いました。奥さんの発案だそうです。

私は肯定的に受け取りましたが、この名前を聞いて、否定的にとらえる人はキラキラネーム同様に、「読めない」と言うでしょう。まず読める人はいないですけど、完全に当て字でもなく、意味とは合致する読みです。

それに、読めない名前なんて昔からいくらでもあります。島津斉彬(しまづ なりあきら)は、それぞれ読もうとすればそう読めるかもしれない漢字の組み合わせではあっても、知識があって初めて読める名前です。そんなに昔の人の名前を出さなくていいですけど、すぐに思い浮かんだのがこれでした。

「なんて読むんだろう」と悩むくらいがちょうどいい。一度覚えると印象に残りますし、漢字と読みがつながっていつつも、少しずれていた方が深みみたいなものや広がりみたいなものを感じさせます。

姓名ともに読めないと、悩み過ぎてどうでもよくなりそうなので避けた方がいいかもしれないけれど、この夫婦の姓は誰でも読めます。

※『人名よみかた辞典―姓の部』 これは持ってないですが、こういう辞典、大好き。でも、姓はともかく名前については日々量産されているので、追加、改訂が楽なインターネットにかなわないですわね。

 

 

女が使えば名前は女の名前になる

 

vivanon_sentenceこの名前を否定的にとらえる人の中には「女の子らしくない」「性別がわからない」という理由を挙げる人もいそうです。漢字も意味も読みも、どちらかというと男っぽいのです。「どちらかというと」であって、はっきり男っぽいわけではないですが、よくよく考えると、プロテスト、レジスタンスの意味合いが含まれています。そこまで読み込む人はまずいないでしょうが、プロテスト、レジスタンスは男に相応しいってこともない。

所詮、名前のイメージは現実によって作られるものです。「海」「空」「新(あらた)」「薫」「晶」「望」「凉」「千尋」「真澄」「飛鳥」「理央」など、男でも女でも使える名前ってあるじゃないですか。「どちらが使ってもいい名前」もしくは「どちらにも通常は使わない名前」をジェンダーニュートラルな名前と表現するらしいですが、名前自体がニュートラルでも、現実に引っ張られて、その子の性別のイメージがつきます。ここに出した名前はすべて知人にいますが、それぞれその人の性別が名前についています。

この中には、過去においては男しか使わなかった名前、女しか使わなかった名前もあるでしょうけど、両性が使うようになったから、中性的な名前として認識されるようになっていく。

女子に五右衛門という名前をつければ女子の名前になるんです。石川五右衛門という大御所がいるので、そっちの力が強くて、なかなか超えられないかもしれないですが、ベーシストのわかざえもんという名前はすでに十分女子っぽいっしょ。

 

 

 

 

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