松沢呉一のビバノン・ライフ

虐殺・部族対立・内戦・バッタ・洪水・難民・食糧不足の中ではウイルスのことなど気にしてられない—ポストコロナのプロテスト[120]-(松沢呉一)

スーダン革命のあともプロテストは続く—ポストコロナのプロテスト[119]」の続きです。

 

 

 

新型コロナはあんまり気にしていないみたい

 

vivanon_sentence2020年3月9日、ハムロック首相に対する暗殺未遂事件が起きます。爆弾を仕掛けた車が首相の乗った車の近くで爆発。軽傷が出ただけで、犯人は捕まっていないのですが、民主化を進めるハムロック首相を快く思わないアラブ主義国家からの刺客なのかもしれないし、対立を続ける国内の反政府組織かもしれないし。

この4日後にスーダン初の新型コロナ感染者が発見されます。

 

 

2020年2月9日付「worldometers

 

 

これまでの感染者の総計は27,000人。人口4千万人のわりには少ないですが、死亡者が1,800人は多すぎます。アフリカン・スタンダードで考えると、この10分の1くらいでもいいはず。つまりは感染者が一部しか把握できていないのです。

政府は首相が暗殺されかねない状態で急速に民主化を進めるしかなく、国民もプロテストで忙しいので、あまり新型コロナのことを気にしているようには見えません。

集会の禁止をしたところで従わないでしょうし、集会潰しだととらえられますので、規制はとくになされなかった模様。

当初はマスクも足りず、入手しやすくなった夏から徐々にマスクをする人たちが増えますが、それでもせいぜいマスク率は2割かそこら。

 

 

保守派も民主派もほとんどマスクをしていない

 

vivanon_sentence以下は7月。

 

 

 

 

それまでのプロテストと様子が違いますね。ニカブをしているのもいます。顔を隠し慣れている女たちでもマスク率は2割程度か。ニカブをしていればする必要はないですけど。男はせいぜい1割。

これは改革に反対する保守派です。女性の服装緩和や売春に反対。それまでの軍事独裁まで支持しているかどうかはわからないですが、そっちに近い人々。そういう人たちがいたから、独裁は維持されてきたわけです。

敬虔なムスリムであれば、礼拝にも勤勉に通い、そこではどうせマスクはしないので、まして外ではしなくて当然という考え方は正しくもあります。

以下は同じ7月の民主派プロテスト。

 

 

 

 

これはダルフールで民兵に襲撃されたのを守らなかった政府に対するプロテストです。しゃがんでいる人たちは座り込みをしているところ。

スタッフらしき外たちはマスクをしていますが、それ以外は1割もしていないかもしれない。屋外ではしなくてもいいと考えているわけでなく、どうでもいいのだろうと思います。インフルエンザが流行っている時に日本でデモをやる際にマスクをする人もいるでしょうけど、ワクチンを打ってなくても気にしない人が多数。それと同じ。

 

 

和平協定調印

 

vivanon_sentence昨年10月3日、政府は反政府勢力と和平協定を結びます。

 

 

 

 

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