松沢呉一のビバノン・ライフ

児童・生徒の自殺と不登校の増加—ポストコロナのプロテスト[121]-(松沢呉一)

虐殺・部族対立・内戦・バッタ・洪水・難民・食糧不足の中ではウイルスのことなど気にしてられない—ポストコロナのプロテスト[120]」の続きです。

 

 

注目すべきは児童・生徒の自殺の増加では?

 

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今回はプロテストと関係ありません。次回のプロテストの前提です。

以下のような記事を読んで「日本社会は女性にコロナの責任を押しつけているのだ」みたいなことを安易に考える人が出てきてしまうことが想像できます。

 

2021年2月10日付「NHK NEWS WEB

 

 

自殺については「新年早々自殺の話—2021年の抱負(なんて立派なものはもうないけれど)[3]」「新年早々自殺の話が続く—2021年の抱負(なんて立派なものはもうないけれど)[4]」「新年早々自殺の話はいつまで続く—2021年の抱負(なんて立派なものはもうないけれど)[5]」「新年早々借金と自殺未遂の話—2021年の抱負(なんて立派なものはもうないけれど)[6]」にたっぷり書きました。その中で説明したように、また上の記事にも数字が出ているように、もともと圧倒的に自殺は男性が多い。

比較としてうんと少なかった女性の自殺率が高くなっているのは、「コロナの皺寄せが弱い女性に来ている」という理由ではなく、「大きなダメージを受けている業種は女性労働者が多い」「自殺への同調、それによる連鎖は女性に起きやすい(可能性がある)」といった理由の方があり得るように私は感じています。とくに後者です。どれもがからみあっている可能性もあるでしょうが。

 

 

児童・生徒の自殺は過去最多を記録

 

vivanon_sentenceいずれにせよ、自殺者数の増減については原因を見極めるのが難しいとして、それより私は児童・生徒の自殺が増えていることの方が気になります。警察庁の速報値では、性別までしか出ていないので、上の記事では1月の児童・生徒の自殺者数がどうなっているのかもわからないですが、2月15日に、このことが大きく取り上げられています。

 

2021年2月17日付「朝日新聞デジタル

 

 

これも同じく原因ははっきりせず、若年層の自殺についても著名な俳優等の自殺による連鎖が大きいとの説も出ていますが、児童・生徒については「もともと大人より自殺が少ないのだから、少々増えたところで問題視する必要はない」とはならんでしょう。大人とは違う枠組みの中で生きていて、自分の判断で環境を変えることが難しいですから、自己決定ができる余地はほとんどない。

 

 

不登校が増えている?

 

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子どものいる人たちと話していたら、不登校が増えているという話が出てきました。

例年、長い休みのあと復帰できなくなる学童・生徒が増える傾向があって、昨年はとくに春の学校閉鎖があった上に、その遅れを取り戻すために、授業数が増えるなどした学校もあり、それについていけなくなった学童・生徒もいるようです。そういう場合に支えになったり、逃避になったりする部活や遊びも封じられて行き場をなくす。

 

 

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