松沢呉一のビバノン・ライフ

MIA女王様に見る「見た目のイメージと現実」—男の名前・女の名前[付録編]-(松沢呉一)

男の名前・女の名前」シリーズに関係しているのですが、名前からは離れるので、「付録」としました。

 

 

女王様に「かわいい」は失礼だとわかりつつ、そう表現するしかない女王様

 

vivanon_sentence人の外面に内面は滲むとは言え、外面ですべてわかるのであれば詐欺師に騙されることはない。にもかかわらず人は外に出るヴィジュアルでしばしば判断します。

数日前に、それを思い切り実感しました。SMクラブ「ラ・シオラ」の新人さん、ミア(MIA)女王様に取材したのですが(4月に出る予定の三和出版のムックに掲載されます)、彼女はメチャかわいい。「かわいい」は上から目線の言葉ですので、女王様に対して「かわいい」は避けた方がいいのですが、ラ・シオラのサイトにもそう書かれているので、許されましょう。

サイトの写真はしっかり女王様っぽく撮られているために、実物の印象とは相当に違います。写真では背が高いように見えますが、これは顔が小さいためで、彼女は女子の平均的身長。贅肉も全然ついてなくて華奢です。それもこれも女王様としてはプラスにはなりません。

世間一般で言えばプラスのはずの評価が女王様としては全然評価されない。顔がでかくて、贅肉がついていて、かわいさが少しもなくても、背が高くて尻が大きければ女王様向き。「彼女、ちょっと怖いよね」「言葉に険があるよね」なんて評価も女王様にとっては褒め言葉。

そういうタイプに会うと、すぐに「女王様になればいいのに」と口走る私ですが、女王様になる前のMIAさんにどこかで会っていたとしてもそんなことは口が裂けても言わなかったでしょう。変態の世界に興味はないだろうと決めつけたと思います。

事実、彼女は誰からもそんなことを言われたことがないまま、自分自身の内的衝動でこの世界にグイグイと入ってきました。

 

 

本物の悪魔

 

vivanon_sentenceプレイも見せてもらったのですが、ここも注目ポイントでした。いないわけではないけれど、少数派のプレイスタイルです。

現実には見た目がかわいい女王様はそれなりにいますけど、多くの場合、スイッチが入って、表情が豹変したり、声のトーンが切り替わったりします。意識的にやる人も、無意識にそうなる人もどっちもいます。これによって相手を威圧して上位に立ちます。かわいいルックスの女王様ほど、そのスイッチが必要になりそうです。

しかし、MIA女王様はスイッチがないんです。かわいいままの表情で、かわいいままの声で、本当に楽しそうに笑いながらひどいことをします。無理に上位に立とうともしない。

もともと女王様らしさを身につけている人だと、ふだんとプレイとの間にギャップがないことはありますけど、彼女は「こんなこと、できません」と言いそうな雰囲気を保ったまんま、まるで躊躇がない。女王様になった過程と同じで、自分の判断でグイグイ行く。

本物の悪魔はこういうもんかもしれないと思いました。かえって怖い。

中身から言うと、本来彼女はブル中野北斗晶みたいなルックスのはずです。しかし、女子プロの選手は素は案外乙女だったりするように、中と外はしばしばズレています。

ブル中野や北斗晶のタイプだったら周りの人が「プロレスに向いているよ」「女王様に向いているよ」と導いてくれて、そんなことは考えたこともない人でも「気づいてみたら」ということになったりします。

 

 

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