銭湯がブームなんだってよ—新・銭湯百景[9]-(松沢呉一)
「今度こそ滝野川・稲荷湯へ—新・銭湯百景[8]」の続きです。
椎名町の妙法湯へ
昨年の大晦日で、東京都内の銭湯をすべて制覇したわけですが、その後は、リニューアルしてから行っていない銭湯に出掛けていて、先日、椎名町の妙法湯に行ってきました。西武池袋線で、池袋の次。
ここは6年くらい前に行ったきりです。まったく記憶がない。場所も覚えてませんでした。それでも一度は行ってますから、行けばわかると思ってロクに地図も確認しておらず、屋号もはっきり覚えておらず、いつものようにスマホは持って来てません。
その辺の人に聞いたら別の銭湯を教えられ、そこは臨時休業。駅から離れ過ぎてました。別の人に聞いてやっと辿り着きました。わかりやすい場所なんですけどね。
フロントで回数券を渡したら、「今ロッカーがいっぱいなので、ちょっと待っていただけますか」と言われました。
どういうこと? 祭りでもあったのか? 商店会の大会合でもあったのか? そういった、いわば異常事態を除いて、こんなことは初めてです。
「そろそろ空いているかもしれないので、見てきてもらえますか」と言われて、脱衣場に入ったら、すごい人の数。ロッカーは30以上あるのに、すべて埋まってます。
「全部使われてました。でも、もう服を着ている人たちがいたので、すぐですね」
そう報告して、出てくるのを待ちながら、フロントのおねえさんに聞きました。
「いつもこんなに混んでいるんですか」
「今日は特別です。この近くの銭湯が休みなんですよ」
さっきの銭湯です。
「それと、テレビで紹介されたんですよ。最近銭湯がブームだとかで」
「サウナじゃなくて?」
「サウナもそうなんですけど、銭湯自体がブームらしいですよ」
たしかに、これほどではないにしても、銭湯が混み合っていることが以前より増えているような気はします。始まりはコロナです。遠出しにくくなったため、安全で手軽な娯楽として着目されたことは前に書いた通りです。レジャー施設と考えれば安いものです。
※暖簾好きとしては迂闊なことに、写真を撮った時にはよく見ていなかったのですが、この暖簾は文字の下に透かしみたいなものが入っているようです。わかりやすいように写真の明度を上げてみました。今度また行って確かめてきます。
前回と今回の緊急事態宣言
昨年の春あたりだと、銭湯も危険ではないかという人たちもいたものですが、その後は脱衣場や待合室で長時間話し込まない限り、「銭湯は安全」ということが浸透して、新規に行く人が増えたのだと思われます。
「若い人たちばっかりですね」
「そうなんですよ。うちは若い人が多いんです」
「ここだと、立教と日芸の学生ですか」
「あとは学習院ですね」
電車だと学習院のある目白から池袋で西武線に乗り換えですが、西武線は池袋から南下するので、椎名町と目白は目と鼻の先。自転車だったらすぐだし、歩いても15分から20分くらいでしょう。
「リニューアルしたのはいつでしたっけ?」
「2019年の1月です。2年前ですね」
「その前に来たことがあったんですけど、正直、まったく記憶がなかったんですよ」
「前はありきたりの銭湯でしたから」
「リニューアルで客は増えました?」
「はっきり増えましたね。前よりお湯がよくなりましたから」
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