松沢呉一のビバノン・ライフ

コロナ禍で変化する人間関係と単純接触—男の名前・女の名前[9]-(松沢呉一)

単純接触効果と潜在的エゴティズム—男の名前・女の名前[8]」の続きです。

 

 

 

単純接触効果で説明ができるさまざまな人間行動

 

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単純接触効果は、狭いコミュニティの中で恋愛感情が生じることをよく説明します。これを利用したテレビ番組がありましたよね。男女5対5で旅行をすると、その中で恋愛感情が生じます。そのコミュニティから離れると、「なんで、あんなんを好きになったのかな」と思うことがしばしばです。

恋愛はさまざまな要因でなされるので、外部と隔絶することでノイズを減らすと単純接触効果がわかりやすい形で内部で起きやすい。学校の教室もこれに近い。

職場恋愛、職場結婚が生じやすいことも単純接触効果を踏まえると理解しやすい。つっても、出会えなければ恋愛や結婚に至らないのですから、たんに「恋愛、結婚の契機となる出会いが職場にある(そこにしかない)」ってことからも説明が可能ですし、職場では抑制も働くために、恋愛や結婚の対象にならなくなることもあって、単純ではないですが。

余談ですけど、先日、そこそこ大きな会社の社員(40代かな)がこんなことを言ってました。

「前は社内恋愛、職場恋愛で結婚するのがいましたけど、最近はまったく聞かなくなりましたね」

前に書いたように、職場結婚を避ける傾向が強まっています。抑制が働いているためだと思われます。

「最近はインターネットで知り合って結婚というのが多いんですよ」

仕事が終わるとずっとやっている人たちもいるのでしょうから、接触時間が増えるのです。

ゲームやアニメなどの趣味でつながってつき合い出す人たちは、オフ会で顔を合わせることが多いらしいのですが、その前に接触時間があったためにすでに好意が生じていて恋に落ちやすいとも言えます。

インターネット初期には「ネットで知り合って結婚した」なんて聞くと、「エーッ」て感じがあって、「テレクラで知り合って結婚した」と同じような受け取られ方だったものですが、遠い昔の話になりました。

※川上直秋「単純接触効果と無意識 ─われわれの好意はどこから来るのか─」 ここで取り上げられている過去の実験も好奇心をかきたてられます。単純接触効果に影響する4つの変数のうちの「呈示変数」(どのように刺激が呈示されるか)を取り上げていて、「新奇性」「ストーリー性」が効果に影響をします。同じことの繰り返しでも効果はあるのですが、そこにこの要素が加わるとより効果的。電通、博報堂あたりはこういう実験結果を広告に取り入れていそうです。

 

 

在宅勤務による人の変化

 

vivanon_sentenceさらに余談ですが、彼が勤務する会社でもその周辺でも、新型コロナの感染者はまだ出ておらず、「いつ出るか」で戦々恐々としているそうです。

「とくに一番目にはなりたくないという思いを抱いているのが多いと思います。最初は大騒ぎになると思うんですよ。同じ部署の全員が自宅待機になって検査を受けさせられて、同じ建物の全員が要観察になるでしょう。取引先にも迷惑をかけるし、家庭でも騒動になります。感染した人を責めてはいけないと思っても、“あいつのせいで”になりかねない。これが当たり前になってしまえばそこまで騒がれないですけど、最初だけは避けたい」

彼の勤務する会社では、一部の業務は今も在宅勤務になっていますが、昨年の緊急事態宣言の際は大半が在宅勤務に。

在宅勤務ってもっとお気楽かと思っていたら、完全管理されているんですね。

「数年は記録が残るのだと思いますが、パソコン上の動きを全部記録されているので、この日にどこまで何の仕事をしたのかすべてわかります。つねに監視されているわけではないですが、いざという時はチェックできますから、下手なことはできない。そういうシステムを導入していない会社だとそこまでのことはないでしょうけど、メールの返事をしないと怪しまれるし、リモート会議もあるので、トイレに行ったり、お茶を淹れるくらいはできても外出まではできません。会社にいるのと一緒です」

 

 

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