松沢呉一のビバノン・ライフ

「学校に行かせろ」プロテスト—ポストコロナのプロテスト[122]-(松沢呉一)

児童・生徒の自殺と不登校の増加—ポストコロナのプロテスト[121]」の続きです。

 

 

 

「金をめぐんでくだせえ」とやる前に問うべきこと

 

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自前の物件でやっている飲食店経営者の中には、補償金バブルになって、車を2台買った人もいるそうです。趣味の車です。知人がよく行っている店の話で、そもそも店自体、趣味でやっているらしい。

こういう話がよく報じられていますが、そりゃ、従業員を雇わず、1日2万に満たない売り上げでやっている喫茶店やスナックは世の中にはザラにあるわけで、そんな店にとってはウハウハですよ。そうなることは明らかだったわけです。

ウハウハになって車を買った店がある一方で、6万円では全然足りず、借金が増え続けている店もあって、いまなお潰れ続けています。ライブハウスのように、飲食店の許可をとっていたか否かで明暗が分かれた業種もあります。緊急事態宣言の対象エリアとそうではないエリアの不公平感も大きい。

天下の愚策ですけど、営業補償をすると、どうしてもこういう不公平感が出てしまいます。この不公平感から、「政府には打ち出の小槌があるらしいぞ」とばかりに、「こっちにも寄越せ」「国民全員にまた金を配れ」の乞食発想の人々が湧いているわけですが、そもそも自粛要請が間違っていたのでは? もっと有効な金の使い方を考えるべきだったのでは?

私を含めて多くの人々が経済停滞を危惧して警鐘を鳴らしていたのに、それに耳を貸そうとしなかった人たちがいまさら何を言っているのかな。

※高円寺にあったクレープとケーキの店。ここはお持ち帰り専門だったはずです。小さな店なので物理的に無理だったかと思いますが、テーブルをひとつ置いて、飲食店の許可をとっていればなんとかなったのかもしれない。ケーキは誕生日会などパーティ仕様やどこかを訪れる時の手土産仕様が多いでしょうから、その分が落ちるだけで赤字に転じる店は多そうです。

 

 

実現できたかどうかはわからないけれども、検討くらいしてもよかったのではないか

 

vivanon_sentenceそんなところに金を回して車の代金にするんだったら、同居している老人や病人のための介護付き宿泊施設を作るか、空いているホテルをそれ用に転用した方がずっとよかったと思います。

観光地のホテルは続々潰れているんですから、そういうホテルを借り上げて、しばらく静養がてら避難をしてもらう。そうすればホテルは維持され、子どもらは今まで通りに学校に行き、今まで通りに遊んでいていい。

老人・病人と同居していて、家庭内で生活を分離することが難しい家庭がどのくらいあるかわからないですが、1割か2割のために、クラス全体が行動を規制されるのは理不尽すぎます。そんなん、児童・生徒の責任ではないべよ。

あるいは学校によっては児童・生徒が減って、空いている教室もあるでしょうから、そういう子どもたちは修学旅行のあとはそこに宿泊できるようにして、検査をして陰性だったら自宅に帰る。学校だと、「家が狭いことがばれて恥ずかしい」ということもあるかもしれないので、区民会館でもいいし。どうせ寄り合いの類いは減っているでしょう。

家にいるよりそっちの方がいい子どもらはそのまま共同生活をすればいい。楽しそうじゃないですか。

※「あー、ここは想定していなかった」と思ったのはクリーニング屋さんです。クリーニングは利益の少ない商売として知られているくらいで、ちょっと売り上げが落ちるとやっていけなくなる店が多いのだと思います。スーツやワイシャツ、ビジネス用コートの売り上げが落ちているはず。それが理由の閉店かどうかわからないですが。

 

 

一律の基準でまとめると軋みが生ずる

 

vivanon_sentence修学旅行に限らず、同居する老人、病人のために、その家庭の子ども、さらには子ども全体の行動を制限するのは間違っていると私は思ってしまいます。コロナ禍の中で、こういった発想が蔓延してしまった感があります。

 

 

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