松沢呉一のビバノン・ライフ

小池百合子が好きなじいちゃんとそれをたしなめるじいちゃん—男の名前・女の名前[14]-(松沢呉一)

潜在的エゴティズムは好悪の感情のみならず生き方までを規定する可能性—男の名前・女の名前[13]」の続きです。

 

 

 

露出の多い人に投票し、自分に似た名前の人に投票する

 

vivanon_sentence一週間ほど前のこと。銭湯の脱衣場で「オレは小池百合子が好きなんだよ」と言うじいちゃんがいて、それに対して、他のじいちゃんが「あの女は●●●●だぞ」とたしなめていたので笑いました。伏字部分には「経歴詐称」ではない言葉が入ります。昔から言われていることで、じいちゃんは見てきたように、あるいは自身が体験したかのように自信満々でしたが、私は根拠を持っていないので、ここには書けないです。

●●●●が事実であっても、それもまた才能のうちであって、それより経歴詐称疑惑の方が問題だと私は思うのですが、あれだけコロナで露出をすると単純接触効果で投票する人が出てきてしまうのです。小池百合子はそこも計算しているであろう点はたいしたもんですよ。支持はしないけど、その点は評価せざるを得ない。

「私は写真映りが悪いんです」と言いたがる人がよくいて、第三者から見ると、「まんまよく撮れているけどなあ」と思ったりするわけですが、まんまよく撮れているから、鏡で見慣れている自分とは違っていて、違うからよく撮れていないと感じるってことなのだとも思えます(「人間は自分が大好き—男の名前・女の名前[11]」で紹介した実験を参照のこと)。

SNSで自分の写真をよく見るし、自撮りでもよく見るので、昨今は相当に修正がなされていましょうが、現実とずれていても「自分である」と認識しているものと近いものを好む。

ここまで見てきた実験結果から言えば、小池百合子の政策を支持できないはずの人でも、名前に類似性のある人は好感を抱くことがあるのは不思議ではない。現実の小池百合子と違う、自分に近い小池百合子を見てしまうのです。じいちゃんに名前を聞けばよかった。

こうして、さまざまな実験に目を通すことによって、女っぽい名前より男っぽい名前の方が裁判官として出世する現象は起こりえるかもしれないと私は思うようになってます。完全に合致するような実験までは見出せてませんが、これを成立させる道筋は組み立てられそうです。以下やっていくとします。

飯田 健、松林哲也、大村華子政治行動論 — 有権者は政治を変えられるのか』 何を根拠に人は投票するのかについてぼんやりとはわかっていたつもりでも、改めて考えたことはなかったので、なんか読んだ方がよさそう。この本がいいのかどうかわからないけれど。

 

 

政治意識の男女の偏在

 

vivanon_sentenceここまで書いてきたような単純接触効果や潜在的エゴティズムと直接関わるものではないながら、前田幸男「投票行動の理論と日本政治研究 : 社会的影響仮説 を素材に」は、「社会環境が個人の決定にどう影響するのか」を考える上で大いに参考になりました。

この一文は投票行動の研究を時系列に概説した内容で、何にどう影響されて人は投票するのかってことを見ることができます。

前回見たようにメディアによる影響も大きく左右します。さらには家族・友人・知人・隣人・同僚といった人的環境が大いに関わっています。小池百合子が好きでも、たしなめる知人がいると考え方を変える人も出てきます。

政治的心情としてはA党を支持しているはずの人が、周辺の人に頼まれたり、影響を受けたりしてB党に投票を変更することがあるのは実感しやすいところです。

また、A党を支持する人が、同様の考え方をする人と多く接することでA党の支持を強固にすることも実感しやすい。SNSはこの点でも作用しましょう。

 

 

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