松沢呉一のビバノン・ライフ

表現によってスペインで逮捕された多数のミュージシャンたち—ポストコロナのプロテスト[129]-(松沢呉一)

国王や政府を嘲笑するだけで懲役刑になるスペイン—ポストコロナのプロテスト[128]」の続きです。

 

 

 

逮捕されたのはパブロ・ハーゼルだけではない

 

vivanon_sentence前回見た三点によって、パブロ・ハーゼル以外にも多数の人々が摘発されていて、総数は見つからなかったですが、逮捕者は軽く三桁に達することは間違いない。

もっと古くからあるのですが(次回参照)、今世紀に入ってからだと、2008年にふたつのバンドが摘発されています。

ひとつはパンクバンド、オリバ・ゴリアク(Oliba Gorriak)。赤いオリーブ。

 

 

 

 

これは2015年のもの。ゴリゴリのプロテスト・ソング。

このバンドのどの曲がひっかかったのか不明ですが、2010年に裁判で無罪判決を勝ち取ってます。

2008年にはネグ・ゴリアク(Negu Gorriak)というバンドも摘発されています。こちらは赤い冬。

 

 

 

 

1990年の曲らしい。ヒップホップ+パンク。

こちらは警察署長が押収した薬物を横流ししているとの歌詞がひっかかって罰金刑に。そのあと、署長はその通りに逮捕されています。正しい情報だったんか!!

このふたつのバンドはどちらもバスク地方のバンドです。バスクでは1980年代からパンクを中心としたバスク・ラディカル・ロック(Rock radikal vasco)というムーブメントがあり、多くのメンバーがドラッグとエイズで死んでいくのですが、ネグ・ゴリアクはその生き残りと言ってよさそうです。オリバ・ゴリアクは2001年結成なので、その次の世代。

 

 

バルトニクは国外に脱出

 

vivanon_sentence2012年、パブロ・ハーゼル同様、ラッパーのバルトニク(Valtònyc)はテロを肯定し、国王を侮辱した罪で逮捕されます。

たぶん問題になったのはこの曲。

 

 

 

 

彼は裁判闘争を続けますが、2018年、懲役3年の刑が最高裁で決定。

このあとさらに国王を侮辱する曲をリリースしてスペインを脱出し、ベルギーへ。スペイン政府は引き渡しを求めますが、ベルギー政府はいまのところこれを拒否しています。スペイン政府は、ラッパーより、汚職疑惑でアラブ首長国連邦に逃げた前国王の引き渡しを求めた方がいいのでは?

この映像にもスペイン第二共和国の国旗が出てきます。間接的アンティファの印。

それとともに途中一瞬出てくるソビエト国旗に注目。彼だけではなくて、今回のプロテストでも槌鎌フラッグが時々見られます。全員が全員ではないと思いますが、この辺の左翼ラッパーたちの時間軸は第二次世界大戦前までで止まっている印象もあります。ファシスト政権が戦後も長く続いたことと関わっているのか?

たしかにドイツで始まるアンティファの動きはドイツ共産党が母体であり、ソビエト直結ですから、その歴史をなぞっているだけかもしれないですが、今現在は、ほとんどのアンティファは、旧ソビエトも現ロシアも批判するでしょう。中国も。

アンティファは統一的な組織ではないので、いろいろいるのでしょうけど、親ソビエト・親ロシアのアンティファは、東ヨーロッパのプロテスターたちの多くと連帯はできないかと思います。

Wikipediaよりスペイン第二共和国旗

 

 

極右をからかったミュージシャンや反体制メディアの編集者も

 

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2015年にはミュージシャンであり、小説家でもあるセザール・ストロベリー(César Strawberry)がテロリズムを肯定したとして摘発されます。

彼はDef con DosStrawberry Hardcoreのふたつのユニットでヴォーカルを担当。

以下はDef con Dos。

 

 

 

 

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