松沢呉一のビバノン・ライフ

結局はカタルーニャ問題—ポストコロナのプロテスト[129]-(松沢呉一)

表現によってスペインで逮捕された多数のミュージシャンたち—ポストコロナのプロテスト[128]」の続きです。

 

 

 

プロテストは独立まで続きそう

 

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ここまで書いてきたように、パブロ・ハーゼル収監による激しいプロテストの背景には苛酷な表現規制があって、とくにここ10年ばかりの蓄積が今回爆発したってところです。これまでにも街頭でのプロテストは行なわれていますが、今回はとくに規模が大きいのは、コロナのストレスが関わっていましょう。

そのプロテストの激しさによるものと思われますが、政府は慌てて、表現を規制する法に反した場合でも懲役刑をなくす方針を明らかにしています。これまでの懲役に対してはこれまでの法が適用されるため、懲役取消にはならないとしても、プロテストの拡大を怖れたものと思われます。

罰金だけにした方が素直に罪を認めて罰金を払うのが増えると思いますけどね。なんでもかんでも重く罰すればいいってもんじゃねえだよ。いったん火がついてしまった以上、法の撤廃まで至らないと鎮まらないようにも思いますし。

事実、なおプロテストは続いています。

先週の土曜日です。

 

 

一律のマスクの義務化には反対の私でありますが、スペインの義務化はより意味のある義務化のため、「比較的マシ」と認識していることは以前書いた通り。それでも「屋外ではせんでええじゃろ」と思いますが、今現在も義務化は生きているようで、半分以上の人はマスクをしていて、高性能マスク率も高そうです。しかし、していない人もいっぱいいるので、マスクしていなくてもすぐさま捕まるようなことはない模様。警察もそれどころじゃないわな。

この日はいくつものチャンネルがYouTubeで中継をやっていまして、早い時間は平和的で、遅い時間は定石通り荒れてました。

警察車両も焼かれてます。

 

 

アナキズム・マークが車両に描かれてます。ただのお約束かもしれないですが、スペインは歴史的にアナキズムが強いので、多かれ少なかれ、暴れているのはアナキズムの影響を受けてそう。アナキズム=暴力肯定ではないはずなんですけどね。

店舗や銀行の破壊や略奪も起きているため、プロテスト全体を擁護はできないとして、スペイン国内の報道にはパブロ・ハーゼルの収監に対して批判的なものばかりではなくて、収監されるのは当然と言わんばかりの報道もあります。

日本であれば、表現の規制に対しては一般にメディアは表現の自由を盾にして反対するでしょう。でも、ポルノ規制には賛成するメディアがありそうだし(朝日新聞とか)、ヘイトスピーチ処罰にも子ども騙しの賛成の意見を好んで出すメディアはあるか(朝日新聞とか)。それと同じく、スペインにも表現規制にためらいのないメディアがあるというだけでなく、表現規制には反対であっても、パブロ・ハーゼルについては擁護しにくいところがあるのだろうと想像します。

 

 

摘発がカタルーニャに集中している理由

 

vivanon_sentence第一にはカタルーニャ独立運動が関与していることです。上に出した先週末の動画でも、二種のカタルーニャ独立旗が出ているのが見えます(共和国旗も)。

マドリッドやバレンシアでもプロテストは起きていますが、バルセロナ、ジローナなど、カタルーニャ地方が激しい。La Insurgenciaはカタルーニャのミュージシャンだけではないようですが、ラッパーのバルトニク、パブロ・ハーゼルはカタルーニャです。

カタルーニャでは1950年代にノバ・カンソ(Nova Cançó)という音楽運動が起きます。新しい歌。スペイン内戦で破壊されたカタルーニャの文化を取り戻し、言葉を取り戻すため、禁止されたカタルーニャ語で歌い、同時にカタルーニャ語の出版活動も始まります。

その中心人物の一人がジョアン・マヌエル・セラート(Joan Manuel Serrat)。

 

 

 

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