カタルーニャとバレンシアの音楽群[1]—ポストコロナのプロテスト[131]-(松沢呉一)
「パブロ・ハーゼルとGRAPOの関係—ポストコロナのプロテスト[130]」の続きです。
マネル(MANEL)
スペインの表現規制を取り上げたことをきっかけにカタルーニャの音楽シーンにどっぷりはまってます。ムチャクチャいいんですよ。
これまでスペインの音楽にはまったことがほとんどなくて、最近だとフラメンコの新しい動きをちょっと聴いたくらいですが、「どうして今まで聴いてこなかったんだろう」と悔しくなってます。ラテン系の音楽はあんまりよくわかっていないので食指を動かされなかったということもあるのですが、チャルガにもちょっとラテンが入っているので、チャルガに詳しくなって以降、とっつきやすくなったのかもしれない。つっても、ラテン色が強い音楽ばかりではないですけどね。
「ビバノン」では、一般にあまり知られていない音楽を取り上げても読む人、聴く人がほとんどいないので、聴いて楽しいというだけだったら、ここまで取り上げようと思わなかったのですが、PVを念入りに観て、歌詞を吟味することで見えてきたことがあるので、まとめておくことにしました。
いくつも気に入ったバンドがあるのですが、まずはバルセロナのマネルを聴いてみてください。
夢と現の間を漂うような音と映像です。歌詞を見てもこの映像と同様、何を歌っているのかはよくわかりません。
ライブもよくて、私がもっとも聴いているのはこういうタイプのバンドだったりするのですが、これ以降取り上げようと思っているのは、音が好きかどうかとは切り離して(だいたい好きですが)、「ポストコロナのプロテスト」に沿って、プロテスト・ソング、レベル・ミュージックの類い、それが匂う類いのバンドです。これがまたカタルーニャには多いのです。
「音楽に政治を持ち込むな」などとほざくタワケは、一回でいいから、歌詞までをしっかり読み込んで音楽を聴くってことをやってみるといいと思います。
ブーオス(BUHOS)
ブーオスはカタルーニャを代表する人気バンドのひとつで、カタルーニャのバッシュ・パナデス(BaixPenedès)が拠点。BUHOはふくろうのこと。
この熱狂がカタルーニャ。メンバーは交替で歌ってますが、客は最初から最後まで大合唱。メンバーより客の方が長く歌っていてコンサートに行くと声が嗄れる人が多いはず。
とくにこれは歌いたくなる曲です。スペイン語を勉強するかな。
しかし、この曲に限らず、ブーオスのライブではずーっと合唱です。また、ブーオスに限らず、ライブでは大合唱がよく見られ、マネルのようなタイプのバンドでさえ合唱してます。
この「Volcans」って曲でコンサートを〆るのが恒例のようですが、バンドも客も熱が下がらない。音が聴こえないのだと思うのだけれど、キーボードの人はコーラスの音程が悪い。でも、そんなことはどうでもいい感じ。客が歌い手ですから。
ざっと歌詞を見たところ、このバンドは直接的な政治色はあまりないのですが、メインボーカルのタンクトップにはSONS OF ANARCHYと書かれています。ここまで見てきたように、スペインの場合、アナキズムはロック的な記号に留まらない可能性があります。
二種の独立旗も出ていて、最後の方ではわざわざその部分を入れる編集をしています。
レインボーフラッグもいくつか出ています。「自分を抑え込んでいるものをとっぱらって(股間の)火山を爆発させようぜ」みたいな歌詞なのですが、MVを見るとレインボーフラッグの意味がわかります。
素晴らしいですよ、このMV。
言葉はいらず、人目も気にせず、子どもさえも放り投げ、異性相手でも同性相手でも、あちこちの股間が噴火して、いたるところに引火しています。カタルーニャは今そういうことになっているわけです。
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