パブロ・ハーゼルとGRAPOの関係—ポストコロナのプロテスト[130]-(松沢呉一)
「結局はカタルーニャ問題—ポストコロナのプロテスト[129]」の続きです。
パブロ・ハーゼルについてはラップだけで懲役とは言い切れない
この問題はあっという間にカタルーニャ独立にテーマがスライドしていて、中央のメディアとしては乗り切れない感が滲みます。少なくとも、この問題は大きくなると面倒なことになるとの読みをしそうです。政府が慌てて緩和策を打ち出したのもこれを抑えたいためでしょう。
カタルーニャ以外の場所に住んでいる人たちも、カタルーニャでのプロテストが独立を求めるものになっているのを見ると、乗り切れないのが出てきそうです。
続いて、第二にはパブロ・ハーゼルの表現に対する刑については執行猶予がついていたのに、他の犯罪によって取り消されている点がひっかかるのだろうと思われます。収監に反対するとなると、他も含めて擁護することになります。
「ラップだけで懲役かよ」という批判は半分正しくて、半分足りない(他の例を含めて、「ラップだけで懲役」と表現しても問題なしですが)。
この犯罪の中にはメディアに対する攻撃が含まれていることもひっかかりそうです。その攻撃対象になったカタルーニャのTV3というチャンネルは独立問題もフラットに取り上げていると評価されているのですが、ゴリゴリの人からすると、フラットに取り上げるのではなお不足と見るのでしょう。自分に有利に報じないと攻撃対象という姿勢は日本でもしばしば見られることです。
※Wikipediaよりカタルーニャ独立旗(左派)
GRAPOを支持しているらしきバルトニクとパブロ・ハーゼル
第三には彼の発言、歌詞の内容に賛同しにくい点があるためです。
具体的には、パブロ・ハーゼルは共産主義者で、共産主義テロ組織GRAPO(Grupos de Resistencia Antifascista Primero de Octubre)までを肯定的に表現しています。バルトニクもそうです。La Insurgenciaのミュージシャンの一人一人を確認まではしていないですが、おそらくそういう曲を出しているのがいましょう。
GRAPOはフランコ政権に対抗して1968年に結成され、フランコ死去のあとも爆弾テロや強盗、誘拐を続け、2000年代に入るまで活動が続けられてましたが、2003年にはGRAPOの政治団体スペイン共産党(再構成派)(PCE(r)/Partido Comunista de España (reconstituido)が非合法化され(スペイン共産党は別に存在していて、これとは別)、主要メンバーはあらかた逮捕され、実質解体したよう。
彼らが殺害したのは87名(別の数字も出てますが、ざっとこのくらいってことで)。大半は警官ですが、カフェテリアの爆破などによって一般市民も犠牲になっています。
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